初診のカルテが破棄されたと思い込んでおられたがアスペルガー症候群で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№5018)
相談時の状況
アスペルガー症候群とうつ病の診断を受けておられる40代女性について、お母様からご相談いただきました。
お母様が、病院のソーシャルワーカーさんに相談しながら進めておられました。
ところが初診の大学病院ではカルテを破棄したと言われ、大学病院の紹介で転医したクリニックも既に廃院となっていたため、それ以上進めることが困難になり、当センターへ相談するようソーシャルワーカーさんから勧められたそうです。
社労士による見解
お母様から詳しくお話を伺うと、小学生の頃は成績優秀でリーダーシップもあり、友人もたくさんいたそうです。
小学校卒業後は中高一貫の有名校へ進学しましたが、中学2年生頃から過激なダイエットをするようになり、高校生の頃は過食嘔吐を繰り返していました。
四年生大学へ進み、卒業後は病院事務の仕事に就きましたが、人間関係がうまくいかず、数か月で退職しました。
その後は短期間で職を転々とし、数年後に結婚しましたが、夫から摂食障害を指摘され、大学病院の精神科へ通院するようになったそうです。
数年後に離婚して実家へ戻ることになり、前医からの紹介で近くのクリニックへ転医しましたが、直ぐに廃院となったため、その後は内科で薬だけ処方してもらっていたそうです。
仕事も何とか努力はしていましたが、どこに就職しても人間関係がうまくいかず、またこだわりの強さから上司の指示に反発することも多かったため、病状はどんどん悪化していきました。
過量服薬による自殺未遂をきっかけに精神科病院へ入院することになり、退院後は系列のデイケアへ通所していました。
就労が困難な状況だったため、障害年金の手続きをお母様が進めようとされましたが、初診の大学病院へ電話で問い合わせたところカルテは破棄したと言われててしまい、紹介状を持って転医したクリニックも廃院となっていましたので、どうすればよいか途方に暮れていたそうです。
受任してから申請までに行ったこと
初診の大学病院には、約10年前まで通院されていました。
確かにカルテの保管義務は最低5年と法律で定められていますが、大学病院などが10年足らずでカルテを破棄してしまうことは非常に稀だと感じました。
直接電話をして確認してみると、「電話ではお答えできない」「直接窓口に来てほしい」とは言われましたが、カルテを破棄したとは言われませんでした。
東京の病院でしたので、遠方のため窓口には伺えないことと、ご本人から委任状も頂戴している旨を丁寧に説明すると、カルテは残っていると教えてもらえ、受診状況等証明書(初診証明)の作成も郵送でお願いできることになりました。
しかし出来上がった受診状況等証明書を見てみると、初診日は明記されていたものの、「17歳で神経性食思不振症を発症し、徐々に増悪して神経性過食症を合併」などと、初診日を遡って誤解されかねない、非常に紛らわしい書き方がされていました。
確かに10代の頃から摂食障害の症状はでていましたので間違いは無かったのですが、本人は異常を感じていなかったため受診は一度もされていませんでした。
まるで、その当時に診断名が付いたかのような印象を受ける文章でしたので、診断書を作成してもらう際はソーシャルワーカーさんを通じて、当時受診は無かったことを改めて説明してもらいました。
またこちらで病歴就労状況等申立書を作成する際も、誤解を招かないようにするため、当時は受診していなかったことの説明を具体的に記載しておきました。
結果
初診日を誤解されることなく、無事障害基礎年金2級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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