知的障害と発達障害で申請して不支給になっていたが再チャレンジで障害基礎年金2級に認められたケース(事例№35)
相談時の状況
障害者就労支援施設の職員さんから、軽度精神遅滞と自閉症スペクトラムの診断を受けた30代男性についてご相談いただきました。
約5年前に一度、お母様が手続きされましたが不支給だったそうです。
日常生活や就労に大きな支障がでているのに、障害年金が認められないのはおかしいと感じて、当センターへ相談してみようと思われたそうです。
社労士による見解
この方は、3歳になっても自分の名前が言えず、会話は成り立たちませんでした。
保育園から市の発達相談所へ行くよう勧められても、ご両親は拒否したそうです。
小学校は普通学級に入学したものの、勉強ができなのはもちろんのこと、他人とのコミュニケーションが一切取れず、トラブルばかり起こしていたそうです。
小学3年の時に、校長先生からの勧めでようやく発達相談所へ行き検査を受けたところ、軽度精神遅滞及びアスペルガー症候群と診断されました。
その際、情緒障害児短期治療施設への入所を勧められたのですが、祖父母が反対し、通院もしなかったそうです。
中学では特別支援学級を勧められても本人が頑なに拒否し、普通学級へ入りました。
しかしクラスに溶け込めるはずもなく、コミュニケーションがうまくいかないことから教室で椅子を振り上げてクラスメートに襲い掛かるなどの暴力行為が度々あったため、3年生からは特別支援学級へ移されました。
高校は定時制に進みましたがそこでも対人トラブルが頻繁にあり、警察沙汰になったこともあるそうです。
就職相談の時には、教師から療育手帳の取得を勧められ、再び発達相談所へ行きました。
しかし検査中に、「自分は障害者じゃない!」と言いだし、途中で帰ってしまいました。
4年かけて定時制高校を卒業しましたが、就職はできませんでした。
家では母親から少し注意されただけでも暴れ出し、部屋はいつもぐちゃぐちゃだったそうです。
バイトをしようと面接を受けてもなかなか通らず、まれに合格してもすぐに勤め先で暴れてクビになりました。
25歳の時に再度発達相談所へ行き、ようやく療育手帳を取得しました。
その後は就労支援A型で清掃業に就きましたが、些細なことでイライラし、職員に暴言を吐いたり、突然帰ったりしていたそうです。
2年前には職員を殴って大怪我を負わせてしまい、就労支援も辞めさせられました。
会話をしようとしても、理解力が低いため相手の伝えたいことがわからず、また被害妄想が強いため、相手がほほ笑んだだけで馬鹿にされたと思い込み、暴力を振るってしまうようです。
これほど日常生活や就労に大きな支障がでているにも関わらず、不支給とされた時の発達相談所が作成した診断書を見ると、障害状態は非常に軽く書かれていました。
お母様が掛かれた病歴就労状況等申立書も非常にあっさりしており、障害状態を具体的に理解してもらえる内容にはなっていませんでした。
受任してから申請までに行ったこと
障害等級の審査は、年金機構が直接ご本人の状態を確認しながら行われるわけではありません。
提出されてきた書類の、記載内容だけを見て判断されます。
特に重要なのが、医師に書いてもらう診断書です。
手足を切断するような障害であれば、「どの部分から切断されていれば〇級」というように明確な基準が存在するため、どこの医師が作成しても内容に大きな差は出ません。
内科系疾患も、検査数値により客観的に審査される部分が大きいため、比較的ましです。
ところが精神障害は、診断書の記載項目のほぼすべてが医師の主観によるものです。
同じ障害状態でも、医師によって障害の程度は大きく異なりますし、病名自体違ってしまうことも珍しくありません。
また知的障害や発達障害は、うつ症状等の二次障害が無い場合はそもそも定期通院の必要が無いことも多く、障害年金のためだけに発達相談所を受診して診断書を書いてもらうケースをよく目にします。
この場合、医師は患者のことを良く把握できないまま診断書を書くこととなり、実態とかけ離れた内容になってしまうことがよくあります。
この方は、2年前に暴力事件を起こしてからは、定期的に精神科を受診しておられました。
その精神科の先生は、理解もある非常に優秀な医師であることを知っていましたので、この方の養育歴などを参考資料として詳しくまとめ、受診時にお渡しいただいたところ、実態に則した診断書をお書きいただけました。
病歴就労状況等申立書は、細かいヒアリングに基づいた詳細なものをこちらで作成しました。
結果
無事、障害基礎年金2級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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