3級にも該当せず不支給とされたが審査請求で2級に変更されたケース(事例№5100)
相談時の状況
約2年前に多動性注意障害(ADHD)とうつ病の診断を受けた30代女性の、ご主人からご相談いただきました。
社労士による見解
この方は幼少期から人付き合いが苦手で、いつも一人で遊んでいたそうです。
外では興味を惹くものがあると衝動的に駆け出してしまい、度々行方不明になりました。
学校では強制されることが苦痛で、理由に納得できなければ相手が誰であっても従うことができず、宿題は一度もやらなかったそうです。
授業も集中して先生の話を聞くことができず、長時間座らせられているのが毎日苦痛でした。
小中高と友達は一人もできず、中学の時は2年生から不登校になったそうですが、部活にだけは参加したかったそうで、放課後そのためだけに学校へ行っていたとのことでした。
高校卒業後は何とか就職し、約5年前に結婚したそうです。
約2年前、妊娠中も休まず仕事へ行っていたそうですが、残業を減らしてもらえず、切迫流産の危険をしてきされる程になったため、医師に診断書を書いてもらい無理やり休職しました。
2か月後に復職を申し出たところ、会社から「戻るところはない!」と言われてしまい、ストレスから不眠やイライラの症状が出現しました。
情緒不安定となり、意味もなく泣き続けたり、赤ちゃんに暴力を振るいそうになったりしたため、異常を感じて精神科を受診したところ、そもそもそういった症状の原因として発達障害の可能性があると指摘され、検査を受けたところADHDと診断されました。
その後は継続して通院し投薬治療を受けていましたが、症状は悪化する一方でした。
しかし経済的な不安が強かったため、周りからは止められましたが、無理をして「障害者雇用」での就労を続けていました。
受任してから申請までに行ったこと
2級相当の診断書をお書きいただくことができ、ご相談から約2ヶ月で申請することができました。
何の問題もなく審査を通過するはずでしたが、約3か月後になんと不支給通知が届きました。
2級どころか、3級にも該当しないとの結論です。
不可解な審査結果でしたので、理由を調べるために厚生労働省へ保有個人情報に開示請求を行い、年金機構の審査資料を取り寄せました。
障害状態認定調書の障害程度を評価する欄には、認定医が3級にも該当しないと判断した理由として、「就労中」とだけ書かれていました。
実は、障害認定基準の精神の障害に関する認定要領には、就労しているだけで安易に障害状態を軽度と判断してはならない旨が明記されています。
しかし実際は、精神疾患のように目に見えない障害は特にですが、就労できているだけで2級には認めてもらえないことがほとんどです。
「一般就労」はフルタイム勤務だけでなく、時短勤務や月数万円程度の就労でも「労働能力あり」とみなされることが多く、過去に何度も審査請求(不服申立)で争いましたが、勝てたためしがありません。
しかし、「障害者雇用」は別です。
「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」には、2級の可能性を検討すべき例として、「就労継続支援A型・B型」と「障害者雇用制度による就労」を挙げています。
明らかに不当な審査結果でしたので、すぐに審査請求(不服申立)の手続きを行いました。
結果
無事に処分変更が認められ、障害厚生年金2級となりました。
前述したように精神の障害では、「一般就労」できていれば2級以上に認められることは殆どありません。
しかし「障害者雇用」であれば、労働能力ありとはみなされないはずです。
ところが、障害者雇用でも問答無用で労働能力ありとみなしてしまう、誤った判断をする認定医が存在するようです。
本来こういった間違った判断をする認定医をコントロールすのが審査官の役割なのだと思うのですが、審査体制の大幅な改革があった平成29年以降は、残念ながら全く機能していないように感じます。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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