心臓疾患で子供の頃から通院していたが障害厚生年金1級に認められたケース(事例№6695)
相談時の状況
低酸素脳症により四肢麻痺と高次脳機能障害が残った20代の男性について、お父様からご相談いただきました。
年金事務所の窓口で指示されるがままに、子供の頃に受診した病院で受診状況等証明書(初診証明)を取得されましたが、その後の手続きに不安を感じて相談に来られました。
社労士による見解
この方は、小学生の時に軽度のQT延長症候群と診断され、以後経過観察で定期的に受診されていました。
自覚症状は一切なく、大学卒業時に受診された際は、今後は年1回の受診でよいと言われたそうですが、その数か月後の通勤途中に突然倒れ、心肺停止状態で救急搬送されたそうです。
何とか蘇生できたものの、低酸素血症による四肢麻痺で寝たきりとなり、失語症や記憶障害などの高次脳機能障害も残りました。
子供の頃からQT延長症候群で定期的に通院し、それが原因で致死性心室性不整脈が起こり心肺停止となりましたので、年金事務所の窓口担当は子供の頃が初診日と判断し、20歳前障害として進めようとしていたのだと理解しました。
しかしこの方は、「社会的治癒」を主張すれば、厚生年金に加入したばかりの救急搬送された時点が初診日として認められ、障害厚生年金が受給できる可能性があると考えました。
「社会的治癒」とは、傷病が治癒(固定)し、投薬などの治療を受ける必要が無く、数年に渡って社会生活を普通に営めていた場合に、再発した時点を初診日として取り扱ってもらえる法理のことです。
この方は小学生の頃にQT延長症候群と診断され、継続して通院していたものの、自覚症状は一切なく、経過観察だけでしたので何か具体的な治療を受けていたわけではありませんでしたので、社会的治癒を主張して進めることにしました。
受任してから申請までに行ったこと
小学生の頃から大学卒業まで通院しておられた病院の受診状況等証明書はすでにお父様が取得されていましたが、社会的治癒を主張するため、緊急搬送された時点の受診状況等証明書を追加で取得しました。
診断書については、四肢麻痺と高次脳機能障害がありましたので、すべて主張するなら肢体障害用と精神障害用の2つが必要です。
この方は四肢麻痺だけで1級相当でしたので、肢体障害についてのみ診断書を医師にお書きいただきました。
結果
無事に緊急搬送された時点が初診日と認められ、障害厚生年金1級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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