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原因不明の下肢障害で障害厚生年金1級に認められたケース(事例№5890)

相談時の状況

両下肢に重い障害がある20代女性からご相談いただきました。

 

社労士による見解

この方は約2年前に、腰痛を訴えて総合病院の整形外科を受診されたところ、腰部脊柱管狭窄症と診断されました。

2か月後には手術を受け、主治医から成功したと言われていたのですが、術後から両下肢に麻痺が出現し、みるみるうちに悪化してほとんど動かせない状態となりました。

術前は腰が痛かった程度だったのに、術後は自力で立ち上がることもできない状態となったのですが、いくら医師に尋ねても、原因不明の返答しかなかったそうです。

 

受任してから申請までに行ったこと

医師に診断書をお書きいただいたところ、自力では立ち上がることもできず、車いすでなければ移動できない状態であるにも関わらず、内容を見ると、両足ともかなりの筋力があるような書き方をされていました。

さらに、両下肢が麻痺している原因について、あろうことか「心因性の可能性あり」などと書かれていました。

自力で両足とも動かすことすらできない状態なのに、筋力があまり低下してないような内容は明らかに事実に反していますし、何より「心因性=心に原因があって動かせないだけ」などと審査上で判断されてしまえば、それだけで障害年金の対象から外されてしまいます。

ご本人は、突如発生した両下肢麻痺の原因は手術の失敗にあったのではないかと疑っておられたくらいですので、診断書の内容が不当であるとの訴えを主治医にされたところ、再度検討したうえで書き直すと言っていただけました。

その後、主治医が多発性硬化症の疑いがあるとの見解を出され、大学病院の神経内科を紹介されて精密検査を受けることになりました。

しかし検査の結果、多発性硬化症は否定され、障害の原因は不明なままでした。

ところがその状況の中で、再度診断書をお書きいただいたところ、傷病名に元々診断されていた「腰部脊柱管狭窄症」と合わせて、大学病院で否定されたはずの「多発性硬化症」を記入されてしまいました。

各関節の筋力やADLについては、殆ど動かすこともできない実態をそのままお書きいただけたのですが、全く別の病気である「腰部脊柱管狭窄症」と「多発性硬化症」を併記された内容だと、それぞれ初診日は異なる判断になってしまいます。

またなにより、下肢障害が複数の障害によるものだと判断されてしまうと、審査上で「障害混在のため認定不可能」とされ、障害年金を支給してもらえなくなる可能性もありました。

そこで、「大学病院で多発性硬化症は否定されたはず」「傷病名は、『原因不明の下肢障害』でよい」ということを医師に説明する文書をこちらで作成し、それを受診時に医師へお渡しいただいたところ、その通りに修正していただけました。

 

結果

無事、障害厚生年金1級に決まりました。

障害年金は、非常に重い障害状態であったとしても、支給されないことがあります。

特に気をつけなければならないのが、「心因性の障害」や「複数の障害が混在している状態」とみられることです。

「心因性=精神的な原因」とみなされると、「手足が全く動かせない・何も見えない・何も聞こえない」というような障害状態でも、障害年金の対象から外されてしまいます。

もしも主治医がそのような判断をされている場合は、医師によって見解が変わる可能性がありますので、セカンドオピニオンとして違う医療機関にも掛かってみることをお勧めします。

全く別の傷病が同じ個所に影響を及ぼしている場合は、個々の障害を切り離して審査することが難しいと思われてしまうと、「審査できない」との理由で却下されてしまうことがあります。

これも慎重に状態や状況を判断しながら進めていく必要がありますので、まずは専門家へご相談されることをお勧めします。

 

 

社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)

舩田 光朗
舩田 光朗社会保険労務士
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