両特発性大腿骨骨頭壊死症で障害厚生年金3級に認められたケース
相談時の状況
ハローワークの、難病の方を対象にした専門相談窓口からご紹介いただきました。
社労士による見解
この方は、約1年前に転倒して右膝を強く痛めたそうです。
1か月経っても痛みが引かず、右股関節も痛み出したため、異常を感じて大学病院の整形外科を受診されました。
検査を受けたところ、両特発性大腿骨骨頭壊死と診断されました。
面談に来られた日から2か月後に、両股関節を人工股関節に置換する手術を受けることが決まっていました。
股関節に限らず、主要な関節を人工関節や人工骨頭に置換しておられる場合は、原則として障害等級3級に該当します。
この方は2か月後に置換手術が決まっていましたので、手術が終わってから申請することにしました。
受任してから申請までに行ったこと
詳しくお話を伺ってみると、この方は以前脱毛症を患い、ステロイド治療を受けておられたことがわかりました。
障害年金制度における初診日は、「障害の原因となった傷病について初めて医師の診療を受けた日」と定義されています。つまり、障害を引き起こした原因がその前にあれば、原因となった傷病から初診日を判断する、ということです。
喘息や膠原病などで長期間にわたりステロイド治療を受けていたり、短期間でもステロイドパルス療法により大量のステロイドを投与されたことがあったりすると、そちらが初診日とされてしまう場合があります。
この方が脱毛症の治療を受けておられたころは、厚生年金ではなく国民年金でした。
障害厚生年金なら3級から支給対象となりますが、障害基礎年金(国民年金)だと2級からしか対象にならないため、脱毛症で初診日を判断されると障害年金を受けられなくなってしまいます。
しかしご本人から主治医に確認してもらったところ、脱毛症の時に投与されていたステロイド剤はそれほど多くなく、期間もわずか数か月でしたので、今回の大腿骨骨頭壊死とは無関係である、との見解でした。
そこで診断書をお書きいただく際に、脱毛症を既往症として書かれるのであれば、骨頭壊死とは無関係だという見解も明記していただくよう医師へお伝えしました。
結果
無事、障害厚生年金3級に決まりました。
障害年金制度は、非常に複雑です。
病気や症状によって様々な特例事項がありますが、特例事項として取り決めがないものでも、医学的な見地から「この場合はこう判断さてこうなってしまう」というふうに、予測できるものも数多くあります。
「どの部分がどう判断されてしまうのか?」というようなことは、経験を数多く積んだものでなければわかりません。
まずは経験豊富な専門家へ相談されることをお勧めします。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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