筋力低下が進行していない状態の重症筋無力症で障害厚生年金2級に認められたケース
相談時の状況
ご本人からお電話をいただき、後日面談にお越しいただきました。
様々な病院で相談員を務めてこられた50代後半の方で、患者さんの障害年金請求を数多く手掛けてこられたのですが、発症から現在までの治療歴が複雑で初診日の判断がつかず困っておられました。
社労士による見解
この方は若い頃から糖尿病や心臓疾患で通院しておられ、腰痛で整形外科にも通っておられました。約5年前から右足が痺れ、力が入らないと感じるようになったそうです。
直ぐに治るだろうと高を括っておられたのですが、徐々に悪化して歩行が困難になときも出てきたそうです。勤務していた病院の整形外科を受診されましたが、原因すらわかりませんでした。
神経内科も直ぐに受診して通院されるようになったのですが、精密検査を受けても確定診断はつかず、しばらくすると易疲労や嚥下障害も出現して就労できないほどの状態となりました。
その後は大学病院へ転医され、約2年後にようやく重症筋無力症と診断されました。
受任してから申請までに行ったこと
この方は昔から様々な病気で病院通いをしておられ、また確定診断が出るまで数年かかっておられましたので、いつの時点が初診になるのか悩んでおられました。
障害年金制度における初診日とは、「障害の原因となった傷病について、初めて医師の診療を受けた日」と定義されています。
糖尿病・心臓疾患・腰痛などは、重症筋無力症と関係ないので初診日には関係してきません。
また病名が確定するまで数年かかっていましたが、重要なのは「関連があると思われる症状」を初めて診てもらったのはいつかということですので、誤診などでも関係してきます。
この方の初診日は、「右足の痺れや脱力感」について初めて受診した日であると判断しました。
直ぐにその病院へ受診状況等証明書(初診日証明)の作成を依頼してもらったのですが、そこは他の疾患でも昔から通院しておられた病院でした。
初めてその病院を受診した日ではなく、その症状について初めて医師に訴えた日を初診日としてご記入いただく必要がありましたので、制度の趣旨や定義などについて医師にお分かりいただくための資料を作成して本人からご提出いただきました。
次に診断書ですが、通常だと重症筋無力症の場合は肢体障害用の様式を使います。しかしこの方は筋力低下があまり進行しておらず、補助用具無しでも歩行ができていました。肢体障害という観点だけで申請すると、3級相当とされてしまう恐れがありました。
さらに詳しくお話を伺うと、この方は疲れやすさや倦怠感が非常に強く、そのせいで就労出来ない状態であることがわかりました。
そこで医師に診断書を依頼する際は、通常の肢体障害用と合わせて、「その他の障害用」も依頼し、そちらに易疲労や倦怠感の症状について詳しくお書きいただきました。
病歴就労状況等申立書を作成する際も、筋力低下だけでなく易疲労などの症状についても詳しく書き、日常生活や就労がいかに困難な状況にあるのかを具体的に記載しました。
結果
無事、障害厚生年金2級に認められました。
障害年金手続きを進めるうえで、どの診断書を使用するのが良いかを判断することが、実は非常に重要です。
診断書の様式には8つの種類がありますが、病名や障害の箇所によって明確に分けられているわけではありません。病気の症状によって判断する必要があり、一つの病名でも複数の様式を使用する場合もあります。
この判断は障害認定基準に基づいて行う必要があり、年金事務所の窓口で渡された診断書様式が正しいとは限りません。
適切な様式を使用しなければ障害状態を正しく審査してもらうことができず、不支給になることも珍しくありませんので、初めに経験豊富な専門家へご相談いただくことをお勧めします。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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