交通事故による右下肢切断で障害基礎年金2級に認められたケース
相談時の状況
この方はトラック運転手をされていたのですが、10年前に過労による居眠りから大型トラックに突っ込んで大怪我をし、右足を膝下から切断しておられました。退院してからご自身で障害年金を請求しようと年金事務所へ相談に行かれたのですが、なぜか窓口で申請できないと言われたそうで、それっきり諦めておられました。
今回当センターの存在をウェブ上で知り、もう一度チャレンジしたいとのことでご相談いただきました。
社労士による見解
窓口担当の説明がややこしかったためか、申請できないと言われた理由までは覚えておられませんでしたが、詳しくお話を伺っても申請できなくなるような問題は見当たりませんでした。
緊急搬送された初診日時点では国民年金に加入しておられましたが、年金保険料の納付要件は問題ありませんでした。
障害状態も、一下肢の踝の上から切断している場合は2級になると障害認定基準に定められていますので、間違いなく障害等級に該当するはずでした。
申請できないと言われた原因として考えられるのは、初診日の証明ができないと思われたことにあったのではないでしょうか。
初診日の証明は、原則としてカルテに基づいて行わなければなりません。この方が緊急搬送された10年前のカルテは、既に破棄されていました。
しかし初診日は、カルテに代わる客観的な証拠があれば証明できます。確認してみると、転院先の病院には初診日が明記されている紹介状が残っていましたし、交通事故証明書のコピーもお持ちでしたので、何の問題もありませんでした。
また紹介状には事故当日に右下肢を切断した旨も記載されていましたので、その時点まで遡って障害状態を認めてもらうことが可能でした。
障害年金は初診日から1年6か月経過した時点を障害認定日といい、本来はそこからでなければ請求できないのですが、手足を切断された場合は切断した時点で症状固定と見なされますので、切断日から申請できます。
受任してから申請までに行ったこと
通常、初診日の証明には受診状況等証明書が必要ですが、初診時の病院でカルテは破棄されていましたので、『受診状況等証明書を添付できない申立書』をこちらで作成し、添付資料として紹介状と交通事故証明書を合わせて提出することにしました。
受診状況等証明書を提出できない場合は、年金事務所の窓口でこの『受診状況等証明書を添付できない申立書』を自分で記入し、提出することを求められます。しかしこの申立書自体は申請を受付けてもらえるようになるだけで、何の証拠にもなりません。合わせて有効な証拠を添付できなければまず認められることはありませんのでご注意ください。
診断書は、現在の状態に関するものだけを医師へ作成依頼していただきました。障害認定日から1年以上経過しており、遡りを求めて請求する場合は、障害認定日時点と現時点の2枚の診断書が必要です。ところが手足を切断したり、人工臓器を入れたりした場合は、その時点で完全に症状が固定しますので、現時点の診断書だけでも遡りが認められます。認定日時点の診断書まで取得する必要がありません。この方は長い間通院もしておられませんでしたので、以前入院しておられた病院を一度だけ受診していただき、現在の状態に関する診断書の作成を依頼していただきました。
結果
無事障害基礎年金2級に認められ、5年分の遡及も行われました。
原則のルールにしたがって進める場合、まずこの方は緊急搬送された病院でカルテに基づいた受診状況等証明書(初診証明)を作成してもらわなければなりませんでした。そして、障害認定日時点と現時点の診断書を取得しなければなりませんでした。
障害年金制度は複雑で、例外的な取り扱いや対応が多数あります。病気によっては、診断書上でも不要になる項目があったり、逆に必要になる書類があったりします。制度として明確になっていないことも多数ありますので、年金事務所の窓口でもわからないようなことは山のようにあります。経験がなければ正しい判断は困難ですので、まずは専門家へご相談いただくことをお勧めします。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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当サイトをご覧いただきありがとうございます。当事務所は京都を中心に、府内全域を対象として、障害年金の申請サポートを行っております。(※相談は全国対応です。)
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