事例№5479・幼少期に先天性股関節脱臼で手術を受けていたが社会的治癒が認められ5年分の遡及もできたケース
相談時の状況
先天性の股関節脱臼が原因で変形性股関節症となり、左股関節を人工骨頭に置換されている50代女性からご相談いただきました。
当初はご自身で年金事務所へ通い進めておられたのですが、障害認定日時点の診断書を書いてもらったところ、子供の頃に先天性股関節脱臼で手術を受けていたことを書かれてしまい、このままでは障害年金を受給できなくなるのではと心配されていました。
社労士による見解
主要な関節を人工関節に置換しておられる場合は、原則として障害等級3級に該当します。
この方はまさにその状態でしたが、初診日が子供の頃だと判断されてしまうと、2級以上に該当しなければ支給されない障害基礎年金の対象となり、確実に不支給となってしまいます。
またそれだけでなく、当時の初診日を証明できる客観的証拠も残っていませんでしたので、そもそも初診日不明となり等級審査まで行きつくことができない状況です。
しかしこの方は、障害厚生年金3級が受給できるはずだと判断しました。
確かに先天性股関節脱臼で小学生の頃に手術を受けておられましたが、その後は治療が終了し、大人になってからも問題なく過ごしてこられました。
50歳を過ぎたころから左股関節に違和感が出るようになり、痛みを訴えて数年前に整形外科を受診して、変形性股関節症と診断されました。
年金や健康保険などの社会保険には、「社会的治癒」という法理が存在します。
これは、医学的に治癒した場合でなくても、症状が社会復帰可能な状態となり、かつ治療投薬を必要としない期間が長期に渡って継続した場合は、社会的に治癒していたとみなし、再発した時点を初診日としてもらえる考え方です。
この方は子供の頃に治療が終了してから、何十年も継続して治療を受けることなく社会生活を営んでおられましたので、社会的治癒とみなされ、厚生年金に加入しておられた数年前が初診日になると判断しました。
受任してから申請までに行ったこと
現在通院しておられる病院で現在の障害状態を証明するための診断書をお書きいただき、病歴就労状況等申立書は、社会的治癒に該当する旨を説明するための文章を記載したうえで申請しました。
結果
無事に社会的治癒が認められ、5年遡及で障害厚生年金3級に決まりました。
ちなみにこの方は、すでにご相談いただいた時点で年金事務所の窓口で指示された通りに、初診証明である受診状況等証明書と、障害認定日時点の診断書を、同じ医療機関で取得されていました。
しかし、初診の医療機関と障害認定日時点の医療機関が同じである場合は、障害認定日の診断書で初診日の証明もできるため、受診状況等証明書は必要ありません。
さらに言えば、この方は左股関節を人工骨頭に置換されている事実だけで3級に該当し、術日を現時点の障害状態を宗明するための診断書に明記してもらえれば、障害認定日の診断書が無くてもそこまで遡って3級の認定を受けることが可能です。
つまりこの方の場合、申請に必要な診断書は、年金事務所で指示された
————————————————————————-
A「受診状況等証明書」 + B「障害認定日の診断書」 + C「現時点の診断書」
————————————————————————-
ではなく、
————————————————————-
A「受診状況等証明書」 + C「現時点の診断書」
OR
B「障害認定日の診断書」 + C「現時点の診断書」
————————————————————
で事足りるのです。
上記AかBは必要なく、しかも通常はBの方が作成費用が高いはずなので、A+Cが理想でした。
ABCすべてが必要というのは、確かに制度の原則としては間違いではないのですが、実務上不要なものへ時間やお金を費やすのはあまり望ましいことではありませんので、初めから専門家へご相談いただくことをお勧めします。
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