脊髄ヘルニアで障害厚生年金2級に認められたケース(事例№6391)
相談時の状況
関節リウマチ、大腿骨骨頭壊死、脊髄ヘルニアなどを患っておられる60代の男性からご相談いただきました。
社労士による見解
詳しく伺ってみると、この方は35歳くらいから運動をしているとだんだん走れなくなったり、お風呂に入ってもお湯の熱さを感じなくなるような症状が出現していたそうです。
異常を感じて掛かりつけの内科クリニックを受診したところ大学病院を紹介され、検査を受けたところ脊髄に生まれつき腫瘍があるとわかりました。
しかし当時の技術では取り除く手術ができないと言われ、何の治療も受けられなかったため、すぐに通院を止めてしまいました。
その後は調子が悪くなると整体や鍼灸院へ行き、気を紛らわせていたそうです。
40歳ごろには腕がはれ上がる症状が出たため、近くの総合病院を受診して検査を受けたところ、関節リウマチと診断され、ステロイド治療が始まりました。
その後は徐々に歩行が困難になっていき、車いすが必要なほどになったため、55歳ごろに再度大学病院を受診して脊髄腫瘍を診てもらったところ、医学が進歩したことで手術が可能となったそうで、切除を勧められました。
腫瘍を切除したことで多少は麻痺が改善しましたが、完全には治らず、杖が無ければ歩行困難な状態でした。
さらに3年前には、リウマチ治療のために長年投与されてきたステロイド剤の影響で大腿骨骨頭壊死を発症し、骨切術を受けました。
原則として、脊髄腫瘍による下肢障害も、関節リウマチも、大腿骨骨頭壊死も、それぞれ障害年金の対象になります。
ご本人の訴えでは、とにかく関節リウマチによる関節痛がつらく、日常生活に支障を生じさせている一番の原因だとのことでした。
とにかく疼痛が酷いので、仕事はもちろん身の回りのことなども満足にできないとおっしゃるのですが、この方はそれだけでは難しいと感じました。
実は、神経系統の障害認定基準には、疼痛の症状は原則として認定の対象外であると定められています。
リウマチは神経系統の障害ではないですし、関節痛を主な訴えとして障害年金が受給できた事例もあります。
しかしこの方は、一番最初の脊髄腫瘍(脊髄ヘルニア)が原因で両下肢に麻痺があり、特に左足の筋力がかなり低下しておられましたので、そちらを主な訴えとして障害年金受給を目指すべきだと判断しました。
受任してから申請までに行ったこと
障害年金は初診日を必ず証明する必要があり、もしもできない場合は、受給自体をあきらめなければなりません。
脊髄腫瘍の初診日は、約25年前に異常を感じて受診された掛かりつけの内科クリニックだと判断し、連絡をしてみたのですが、残念ながらカルテはすでに破棄されており、それ以外の情報についても、何も残っていませんでした。
この方は、クリニックの紹介で大学病院を受診していましたので、その大学病院で当時のカルテと一緒に保管されているはずの紹介状にクリニックの初診日が書いてあれば、それで証明できると考えました。
ところが届いた受診状況等証明書を確認してみると、こちらが依頼した25年前のことではなく、再度受診した55歳ごろのことだけが書かれていました。
病院の文書係に尋ねると、25年前のカルテはすでに破棄されているため、書けないと医師が主張されているとのことでした。
しかし当センターでは過去の経験から、この大学病院は昭和59年以降のカルテをすべて倉庫へ保管されていることを知っていましたので、その旨を文書係に説明し、医師に再度依頼してもらいました。
すると、やはりカルテは残されており、当時の紹介状を入手することができました。
内容を見ると、ご本人の記憶とは異なる医療機関でしたが、概ね初診日を証明できる程度の情報が認められましたので、これを証拠として進めることにしました。
診断書を医師に依頼していただく際は、この方は複数の障害をお持ちで、非常にややこしい状況でしたので、脊髄腫瘍について審査を受ける旨や、その初診日についての説明などを参考資料にまとめ、受診時にお渡しいただきました。
結果
無事、障害厚生年金2級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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