うつ病で社会的治癒が認められ障害厚生年金2級に決定し遡及も認められたケース(事例№6605)
相談時の状況
うつ病を患っておられる50代の女性からご相談いただきました。
仕事ができない状態が続いていたため、主治医から障害年金を勧められたとのことでした。
社労士による見解
この方はお子さんの不登校に悩み、抑うつ症状が出現したため、約10年前に近くの精神科クリニックを受診されました。
しかし受診はその1回のみで、お子さんの不登校問題が解消したため、安心して症状も治まったそうです。
その後は問題なく生活しておられましたが、3年前に転職したところ、社長からのパワハラとセクハラが原因で情緒不安定となりました。
不眠、抑うつ、食欲不振などの症状が出現したため、10年前に行ったクリニックへ通院するようになりました。
症状に改善が見られなかったため、1年後に現在のクリニックへ転医し、現在も継続して通院されていました。
ハラスメントの経験から対人恐怖症となり、ほとんど人と交流することなく自宅へ引きこもって生活されていました。
希死念慮も強く、2級以上の障害状態にあることは明らかでした。
受任してから申請までに行ったこと
障害年金の初診日は、病名が付いた時ではありません。
関係があると思われる症状について、初めて医師の診療を受けた日が初診日です。
しかし、精神の障害は目に見えないものですし、医師によっても見解が異なることも珍しくありません。
病名が何であれ、精神的な症状を訴えての受診は、一連のものと見なされる可能性が高いです。
原則としては、抑うつ症状を訴えて約10年前に受診した時点を初診日とするところですが、その時の受診は1回だけで、その後約8年に渡って受診はなく、普通に生活されていました。
社会保険制度には、「社会的治癒」という考え方があります。
これは、精神疾患の場合は一旦寛解に至り、その後投薬治療などの必要が無く長年にわたって社会生活を問題なく過ごせていた場合は、再発した時点を初診日と認めてもらえる法理です。
法律の条文などで明確に定められているものではありませんので結構あいまいなのですが、この方の状況は社会的治癒が認められる可能性が高いと判断しました。
そこで、受診状況等証明書(初診日証明)を依頼する際は、最初に受診したときのことだけでなく、8年後に再び受診したときのこともお書きいただくようお願いしました。
診断書を医師にお書きいただく際は、社会的治癒を主張する旨や、詳細なヒアリングに基づいた過去から現在までの状況についてまとめた参考資料をお渡しいただきました。
病歴就労状況等申立書を作成する際は、社会的治癒を主張する旨も明記しておきました。
結果
無事に社会的治癒が認められ、再発から1年半経過した時点まで遡って障害厚生年金2級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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