うつ病で障害年金を請求しようとしたが医師に病状を理解してもらえていなかったケース
相談時の状況
障害者就業生活支援センターの所長様から、うつ病を患っている50代男性の利用者様についてご相談いただきました。
ちょうど1年半前にうつ病を発症し、精神科へ通院しておられたのですが、就労できない状態が続いていたため主治医に障害年金の相談をされたところ、「あなたはもらえません」と言われてしまったそうです。
社労士による見解
ご本人にお会いして詳しくお話を伺うと、この方は20年以上も勤務していた部署が約2年前に廃止され、新しい部署へ転属となったそうです。
それまでは自信を持って仕事に取り組めていたのに、新しい部署で知らない仕事に取り組まなければならなくなり、不安感や絶望感から不眠の症状が出現するようになりました。
情緒不安定となって突然泣き出したり、死んでしまいたいという気持ちが抑えられなくなったりしたため、家族に勧められて近くの精神病院を受診されました。
そこでは適応障害と診断され、医師の勧めですぐに休職されました。
休職中は自宅に引き籠って過ごしておられたのですが、病状は全く良くならず、1年間休職されたのちに退職されました。
継続して同じ病院の同じ医師に掛かっておられましたが、主治医は非常に若く、診察時は薬のことを質問してこられるだけで、日常生活の状況や詳しい症状については殆ど話をされていないとのことでした。
職場へ行かなくなっても1年以上同じ症状が継続しており、改善している様子が全くありませんでしたので、適応障害という診断名自体に違和感を覚えました。
受任してから申請までに行ったこと
普段から医師に詳しい症状や日常生活の状況についてお話できていないとのことでしたので、まずは実際の状態について医師に認識してもらう必要があると感じました。
そこで受診の際には、今まで医師に伝えられていなかった症状や状況について、積極的に本人からお話しいただくようアドバイスしました。
その後は受診のたびに医師へ伝えようとされたのですが、殆ど耳を傾けてもらえず、数か月経っても医師の態度に変化がなかったため、今まで症状に改善がみられなかったこともあり、転医を決意されました。
こちらで診療できる医療機関をお教えしたところ直ぐにそちらへ移られ、何度か受診されたところうつ病と診断されました。
そして転医されてから数か月で、診断書をお書きいただくことができました。
結果
無事、障害厚生年金2級に決まりました。
この方は信頼できる医師に出会えたことで症状にも改善が見られるようになり、まずは障害者雇用としてですが、就職活動も開始されました。
症状が改善してきた要因は、障害年金を受給できたことで経済的な不安が少し改善されたことにもあったのではと思います。
この方は、次の更新の頃には一般就労できるまで回復され、障害年金を受けなくてもよくなるのではとひそかに期待しています。
重いご病気の方が、みんな喜んで障害年金をもらいたいと考えておられるわけではありません。
大半は、病気が良くなり、仕事をしてお金を稼いでいけるようになりたいと考えておられます。
しかし無理をして仕事をすることで病状はますます悪化し、取り返しのつかない状態になってしまうのであれば、一時的に障害年金を活用して治療に専念されることも重要だと私は考えています。
もちろん重い障害状態でなければ障害年金を受給することはできませんが、実際に障害等級に該当するほどの状態かどうかをご自身で判断するのは難しいと思いますので、まずは専門家へご相談いただくことをお勧めします。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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