初診日について間違った内容を診断書に書かれたが障害基礎年金2級に認められたケース(事例№6585)
相談時の状況
自閉症スペクトラム障害の診断を受けている20代男性からご相談いただきました。
高等技術専門校の教師から障害年金を勧められ、まずは当センターへ相談してみるよう言われたとのことでした。
社労士による見解
この方は幼少期から周りに合わせることができず、集団行動も出来なかったそうです。
小学校に上がってからも他人に興味が持てず、自分から人に話しかけることはありませんでした。
話しかけられても曖昧な内容は理解できず、場の空気や相手の意図もくみ取れなかったため、まともに返答できないことも多かったそうです。
普段は無口で大人しいのですが、自分の思い通りに行かないことがあると暴れまわったり、クラスメートに暴力を振るうこともありました。
そのため学年が上がるにつれて周りから避けられることが多くなっていき、いじめにも遭いました。
中学・高校でもクラスメートと人間関係を築けず、自分の思い通りにならないと暴力を振るうこともあったため、ひどいいじめを受けるようになったそうです。
高校卒業後は就職しましたが、職場でも人間関係を築けずに約半年で退職し、何もかもがうまくいかない絶望感から自傷行為を繰り返すようになりました。
この頃から自身の精神的な問題を自覚して精神科へ通うようになりましたが、なかなか医師とも良好な関係を築けず、短期間での転医を繰り返しました。
希死念慮が強く、自殺の恐れがあったため何度か入院しましたが、最近はある程度落ち着きが見られ、高等技術専門校へ通うようになっておられました。
希死念慮は治まっており、二次障害としてのうつ症状などは落ち着いておられましたが、発達障害の特性から今後も良好な人間関係を築くことは困難で、サポート無しでは生活していくことが難しい状況でしたので、障害年金を受給できる可能性は高いと判断しました。
受任してから申請までに行ったこと
ご本人が初診として認識しておられた精神科クリニックへ受診状況等証明書(初診証明)の作成を依頼しようと連絡したところ、そこよりも前に別のクリニックを受診されていたことが判明しました。
初診はそちらのクリニックになると判断し依頼をしてみたところ、問題のない内容で書いていただけていたのですが、現在の主治医に診断書を書いてもらったところ、なんと「子供の頃に児童相談所で非定型自閉症と診断された」との記載がありました。
「診断された」ということは「医師の診療があった」ということになり、児童相談所が初診ということになってしまいます。
改めて初診証明を取り直す必要がありましたので、児童相談所へ確認した見たところ、当時の記録は一切残されていないことがわかりました。
その児童相談所では、以前から相談者が25歳になると記録をすべて破棄する決まりになっているとのことでした。
初診日を証明することができなければ、障害年金を受給することはできません。
しかしよく話を聞いてみると、その市の児童相談所は、そもそも医療機関としての機能を持っていないこともわかりました。
京都市であれば、児童相談所機能と合わせて診療所も併設しており、医師も常駐しているのですが、その市では知能検査や発達検査は行われるものの、医師はいないため医師による診療行為は一切行われていませんでした。
おそらくは、クリニックを受診した際に、ご本人か親御さんが勘違いをして医師に説明してしまい、そのまま診断書に書かれたものと推測できました。
そのため病歴就労状況等申立書を作成する際は、こういった事情を細かく記載し、初診は児童相談所ではなく、成人後に受診したクリニックだと主張しておきました。
結果
無事に初診日が主張通りに認められ、障害基礎年金2級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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