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弁護士でも窓口担当者に申請受付を拒否されていたケース(事例№5487)

相談時の状況

よく患者さんをご紹介いただく、精神病院のソーシャルワーカーさんからご相談いただきました。

知的障害をお持ちの20代女性について、成年後見人をされている弁護士さんが障害年金手続きを進めておられたのですが、なぜか年金事務所窓口の社労士に申請を受け付けてもらえず、困っておられるとのことでした。

 

社労士による見解

成年後見人をされている弁護士法人へ伺い状況を確認したところ、その女性はDQ50台の軽度知的障害者で、ADHDもあり、日頃から暴れて物を壊すなどの問題行動が頻繁にありました。

この女性のお母様も知的障害者で、自宅で自力出産し、その直後に行方不明になったそうです。

父親が誰かもわからず、すぐに乳児院へ預けられました。

その後は施設で育ってこられたのですが、善悪の判断がつかず、子供の頃から犯罪行為などを繰り返してこられたそうです。

トラブルが絶えないため、小学5年生の時に総合病院の小児科を受診させたところ、ADHDと診断されました。

その約半年後に他院へ転医し、そこで発達検査を受けたところ、DQ50台の知的障害であることもわかりました。

その後は様々な病院を転々とされ、約2年前から現在の病院へ通院しておられました。

最初にADHDの診断を受けた小児科で、受診状況等証明書(初診証明)を書いてもらい、現在の主治医に書いてもらった診断書と合わせて申請しようとしたところ、窓口担当の社労士から、次のように言われたそうです。

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『発達障害と知的障害は別の障害なので、知的障害の診断を受けた医療機関でも受診状況等証明書をもらってきてください』
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言われるがままに、知的障害の診断を受けた医療機関へ問い合わせてみたところ、残念ながら当時のカルテは既に破棄されていました。

再度年金事務所窓口を訪れ、その旨を説明されたところ、

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『知的障害の初診証明が取れなければ受け付けられませんので、当時の状況を知る二人以上の第三者を探し出し、第三者証明(初診日に関する第三者からの申立書)を書いてもらってください』
—————————————————————–

と言われ、用紙を渡されました。

しかし、身寄りのないこの女性の当時のことを証言してくれる方など誰も見つからず、仕方なく成年後見の弁護士さん自らが第三者証明を記入し窓口へもっていかれたのですが、受け付けてもらえませんでした。

ところが弁護士さんが調べてみると、そもそも知的障害がある場合は、初診日を証明する必要すらないことがわかり、その法的根拠を窓口担当者に見せたうえで受付を要求されたのですが、それでも頑なに窓口の社労士は受け付けようとせず、困り果てて病院のソーシャルワーカーに相談され、当センターへたどり着かれました。

 

受任してから申請までに行ったこと

そもそも、知的障害があると認められる場合は、初診日は初めて医師の診療を受けた日ではなく、「生まれた日」と判断されます。

そのため、初診日を証明する必要がありません。

また、ADHDで初診日を証明できているにも関わらず、知的障害を別個で証明しろという指示も理解不能です。

発達障害と知的障害は相互に深く関係しており、切り離して考えられるものではありません。

すぐに病歴就労状況等申立書を作成し、ご依頼いただいた数日後に申請を完了させました。

 

結果

無事、障害基礎年金2級に決まり、障害認定日までの遡りも認められました。

先日新聞にも掲載されていたニュースで、窓口担当者の認識不足から受付してもらえず、数十年後に訴訟を起こして損害賠償が認められたニュースがありましたが、このようなトラブルは表面化していないだけで、全国的に日々発生していると思われます。

ですが、こういったことが起こる原因は、一概に窓口担当者の責任だけとは言い切れません。

今回のケースも、ニュースで取り上げられた事例も、マニュアルに沿った対応としては間違っていないのです。

この弁護士さんは、窓口担当者の判断が間違っていると気付かれましたが、一般の方であれば、「そういうものか」と納得するしかないため、そのまま泣き寝入りするしかなく、問題が表面化することもあまりありません。

残念ながら、障害年金手続きは、マニュアルだけで対応できるほどシンプルではありません。

障害年金制度自体に山ほど例外事項があり、それに加えて医学的な知識も多く必要になりますので、一般の方はもちろんのこと、窓口担当者でも対応は困難です。

障害年金専門を謳う社労士でも、それなりの経験や知識がなければ対応できないことが山ほどあります。

 

社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)

舩田 光朗
舩田 光朗社会保険労務士
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