二次障害のない広汎性発達障害で障害基礎年金2級に認められたケース
相談時の状況
障害者就業生活支援センターの職員様からご紹介いただき、支援センター内で面談を行いました。
社労士による見解
この方は幼少期から、周りと馴染むことができませんでした。
保育園で本人が描いた絵を見た友人から異常を指摘されたことをきっかけに、母親が病院へ連れていったところ、強迫性障害と診断されました。
しかし母親は大したことないと考え、通院はさせなかったそうです。
その後は小学校でも中学校でも友達ができず、いつもいじめられていたそうです。
また授業中に教科書を目で追っていると先生の話が耳に入ってこず、授業についていくことができませんでした。特に国語は、物語の登場人物の心情を読み取ることが全くできなかったそうです。
高校卒業後は筆記試験のない芸術大学へ進学しましたが、オリエンテーション時に書類を目で追いながら口頭で補足説明されると訳が分からなくなり、授業の手続きができなかったそうです。
部活に入っても先輩の言葉を正しく理解できないため頻繁に怒らせたり、アルバイトを始めても同時に複数の作業を行えないため、いつも数日でクビになっていました。
19歳の頃に自閉症の存在を知り、症状が自分に当てはまっていると感じて大学病院で発達検査を受けたところ、広汎性発達障害の診断を受けました。
大学卒業後はアルバイトも含めて何度か一般就労を試みましたが、いずれもすぐに辞めさせられるため、20代の若さで生活保護を受給するようになりました。
27歳の時にこのままではいけないと考え、生活保護を断ち切って自立しようと、障害者雇用での就労や、障害年金の受給を決意しました。
しかし主治医に障害年金の相談をしたところ、発達障害でもうつなどの二次障害が出ていなければ受給できないと言われてしまい、困って就業生活支援センターへ相談されたそうです。
実際にお会いしてお話をしてみたところ、確かにうつ症状等は無かったため非常にお元気そうでしたが、コミュニケーション上の問題があることは直ぐにわかりました。
一般就労は困難でしたので、障害等級2級に該当する可能性が高いと判断しました。
受任してから申請までに行ったこと
発達障害は、「社会性やコミュニケーション能力が乏しかったり、不適応な行動が見られたりするため、日常生活への適応が困難」な度合いによって、障害状態の審査を行う旨が認定基準に書かれています。
そのため前述の医師が言うような、二次障害の有無は原則関係ありません。
ところが実際には二次障害のない発達障害だと、障害状態が軽いとして不支給とされてしまうことがよくあります。
主な原因は、発達障害もうつ病や統合失調症などの精神疾患と同じ「精神の障害用」の診断書を医師に作成してもらうのですが、日常生活能力に関する項目を軽く書かれてしまうことにあります。
「適切な食事」や「身辺の清潔保持」といった項目があり、うつ症状等がある方は「食欲が低下して食べられない」「意欲が低下して入浴できない」という理由から「できない」と判断してもらい易いのですが、二次障害が無い方は、「食べられる」「入浴できる」ため、「できる」と医師が判断してしまうのです。
しかしこの項目は、単に「食べられる」「入浴できる」ということだけで判断するのではなく、単身で生活するとして、自己の判断でそれぞれを準備も含めて適切に行えるかどうか、という観点から判断しなければならないのです。
その点をご理解いただけていないことが多いため、不当に軽い内容の診断書ができ上がってしまうのです。
そういった正しい認識を医師に持っていただけるよう、資料を作成して医師にお渡しすることも考えたのですが、「受給できない」と言われたショックから転医を希望されましたので、発達障害にもご対応いただけて信頼できる医師をご紹介したところ、直ぐに診断書をお書きいただけました。
病歴就労状況等申立書は、詳細なヒアリングに基づいて幼少期から現在までの経緯を詳しくまとめ、広汎性発達障害の影響からいかに日常生活が困難な状況であるかをわかりやすくまとめました。
結果
無事、障害基礎年金2級に決まりました。
ご本人の希望通り、今後は生活ほどの受給を止め、就業生活支援センターから紹介を受けた障害者雇用のお仕事と障害年金からの収入で自立できることとなりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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