自閉症スペクトラムで障害基礎年金1級に認められたケース
相談時の状況
発達障害と診断された40代男性からご相談いただきました。
ご自身で手続きを進めようと年金事務所に通われたのですが、何度説明を受けても理解できず、窓口担当者から社労士に相談した方が良いと勧められたそうです。
まずはお一人で面談にお越しいただいたのですが、一見普通に受け答えができているように感じるものの、注意深く観察していると、やり取りを殆ど理解できておられないことが分かりました。
そこで面談後に奥様へ連絡し、後日ご夫婦で改めてお越しいただきました。
社労士による見解
奥様に補足してもらいながら、詳しくお話を伺いました。
この方は子供の頃より、耳から入ってくる言葉があまり理解できず、話す内容が少しでも長くなると会話が成立しなかったそうです。勉強は全般的にあまりできず、運動も苦手でした。
さらに朝が苦手で、どれだけ注意されても遅刻を繰り返すため、学校へは母親に無理やり連れて行かれていました。
また本人曰く、母親から虐待を受けていたため、死んでしまいたいと考えて小学生の頃からリストカットや首吊り未遂を繰り返していたそうです。
中学・高校でも状況はあまり変わらず、頻繁に遅刻や欠席を繰り返すため、卒業はギリギリでした。
2年浪人して大学に合格し、卒業後は一般企業に就職しましたが、会社でも遅刻を繰り返し、仕事もまともにできなかったため、数か月で退職させられました。
その後は介護職として障害児のサポート施設に就職されたのですが、子供たち相手の仕事だったため何とか継続勤務出来ていたそうです。
しかし周りからは、「介護されるほうなんちゃうの?」と噂されていたそうです。
職場で知り合った女性と結婚し、奥さんの実家の家業を手伝うようになったのですが、何をやらせてもうまくできませんでした。
異常を感じた奥さんに促されて精神科を受診したところ、ADHDと診断されました。
ご本人は一見すると問題が無いように感じますし、受け答えもできているように見えます。
しかし実際はわかったふりをしているだけで殆ど理解できておらず、金銭管理や身の回りのことなども一人では行なえていませんでしたので、障害等級に該当する可能性が高いと判断しました。
受任してから申請までに行ったこと
相談に来られた時点では、主治医に依頼して既に診断書を取得しておられました。
ところが内容を拝見すると、実態に則した内容とは言い難く、発達障害と診断されているものの、発達検査を実施されているわけではありませんでした。
精神科医の方々全員が発達障害に詳しいわけではなく、むしろ得意とされている先生の方が少ないのが現状です。
受診されていたクリニックは発達障害にあまり明るくないところでしたので、信頼できる医療機関をご紹介したところ、そちらへ転医されました。
転医先で発達検査を受けられたところ、自閉症スペクトラム障害と診断され、またIQも61と軽度知的障害であったことがわかりました。
直ぐに診断書をお書きいただくことができ、病歴就労状況等申立書はこちらで作成して申請しました。
結果
無事、障害基礎年金1級に決まりました。
障害年金の手続きは、非常に複雑です。
また手足の切断などのわかりやすい障害であれば、時間を掛ければ一般の方でも問題なく進められる場合もありますが、精神疾患は目に見えない病気であるため、診断書も医師の感じ方や考え方によって大きなばらつきがでてしまい、実態とかけ離れた内容となることが珍しくありません。
原則として障害状態の審査は診断書などの提出書類に掛かれた情報だけで審査されますので、提出した診断書や病歴就労状況等申立書の内容が間違っていても、それに基づいて判断されてしまいますのでご注意ください。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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