発達障害で毎回ほぼ同じ内容の診断書を提出し3回目で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№5136)
相談時の状況
自閉症スペクトラム障害の診断を受けておられる、40代男性からご相談いただきました。
社労士による見解
この方は幼少の頃から集団行動が苦手で、誰とも打ち解けることができませんでした。
人の気持ちが理解できず、場の空気を読むことが出来ないため、小学校に上がると、クラスメートに場違いな発言をしたり、無意識に相手を傷つけてしまったりすることが良くあったため、いじめられるようになりました。
「おかしなことをいうな」とよく言われたそうですが、自分では何がおかしいのかわからず、会話すること自体が怖くなったそうです。
ストレスから、小学五年生で円形脱毛症になりました。
中学・高校でも状況は改善せず、常にクラスでは孤立していたそうです。
高校卒業後は親の意向で調理師専門学校へ進みましたが、2対以上のことを同時に行うことができず、調理作業の優先順位も理解ができなかったため、度々授業中にパニック状態となって泣き出しました。
卒業後はホテルのレストラン部門へ就職しましたが、仕事が覚えられず、同僚とのコミュニケーションも満足に取れなかったため、頻繁に上司から叱責を受けていました。
初めは指示された単純作業を何とかこなしていましたが、徐々に複雑な業務も要求されるようになっていきました。
しかしまったく対応できず、上司からは叱責され、後輩や同僚からは馬鹿にされる毎日で、ストレスから抑うつ・不眠・思考制止などの症状がでるようになっていきました。
母親が異変に気付いて仕事を辞めさせ、自宅療養させていたそうですが、首吊り自殺を計画して遺書を書いていることが発覚し、精神科への通院が始まりました。
数年前から障害者雇用にて介護の仕事に従事していますが、人の気持ちがわからず、抽象的な指示も理解できないため、頻繁に同僚や利用者を怒らせてしまいます。
将来に対する絶望感から希死念慮も強く、「死にたい」などと家族に訴えることが度々あるため、目を離すことができません。
自閉症スペクトラム障害に加えて、抑うつ・不眠・思考制止・希死念慮などの症状も長く続いておられましたので、障害等級2級以上に該当することは確実だと判断しました。
受任してから申請までに行ったこと
ご本人へのヒアリングによって初診と判断していた精神科クリニックへ受診状況等証明書(初診日証明)を作成してもらったところ、その数か月前に他院を受診されていたことが判明しました。
その医療機関では、既にカルテは破棄されていましたが、さらに詳しく調べていくと、その数年前に大学病院の精神科を受診されていたことが判明し、そちらで問題なく初診証明を取得することができました。
診断書も確実に2級相当と判断できる内容でお書きいただけましたので、安心して申請したのですが、数か月後に不支給通知がご本人へ届きました。
明らかに不当な審査結果でしたので、直ぐに審査請求(不服申立)の手続きを行いました。
しかし審査請求は、結果が出るまでに短くても半年は掛かります。
また精神の障害は障害認定基準が非常に曖昧であり、どんなに不当審査であることを訴えても審査請求の時点で覆ることは稀なため、大抵再審査請求までもつれ込みます。
再審査請求も半年以上は掛かるため、決着が出るまでに合わせて1年以上も掛かってしまうのです。
こういった場合は、少しでも早く障害年金をスタートさせるために、審査請求と同時並行して、もう一度いちから申請(事後重症請求)を行うことが良くあります。
不支給とされてしまった診断書は明らかに2級相当の内容で、当たり前ですがそれ以上重い内容で書いてもらうわけにはいきませんでしたので、ほぼ同じ内容を診断書をご作成いただき、2度目の申請を行いました。
するの数か月後に、再び不支給通知が届きました。
すぐさま医師に、もう一度ほぼ同じ内容の診断書をご作成いただき、3度目の申請を行いました。
結果
数か月後に年金証書が届き、ようやく障害基礎年金2級に決まりました。
ほぼ同じ内容の診断書を提出し続けて、3度目の申請で認められたのです。
誰が聞いても、「おかしい」と感じるのではないでしょうか?
なぜこのようなことが起こるのでしょう。
原因は、そのときたまたま当たった認定医にあります。
障害等級に該当するかどうかの判断は、年金機構の認定医が行います。
この認定医というのは、障害等級審査を行うための年金機構専属医師というわけではありません。
普段は開業医や勤務医をされている普通のお医者さんで、障害年金のプロというわけではないのです。
精神の障害は、目や耳などの他の障害と比べると認定基準が曖昧なため、同程度の障害であっても、その時たまたまあたる認定医によって異なる審査結果が出てしまいます。
当センターでは、年間200人程度の申請を行っており、そのうち約半数が精神の障害なのですが、間違いなく2級相当の内容で申請しても、3級や不支給と認定されてしまうケースが、年間1~2人程度は必ず発生します。
他府県の障害年金専門社労士と年に数回意見交換をする機会があるのですが、どこの事務所でも同様のケースが散見されます。
いくら認定基準が曖昧な精神障害でも、客観的に見て障害等級に該当するのが明らかな場合は、再審査請求まで行けば処分変更されることが多いです。
しかし再審査請求まで行くと余分に1年以上も掛かってしまうことになりますので、このようなケースは、同時にもう一度申請しなおすことをお勧めします。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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当サイトをご覧いただきありがとうございます。当事務所は京都を中心に、府内全域を対象として、障害年金の申請サポートを行っております。(※相談は全国対応です。)
「相談して良かった」「やるべきことが明確になった」と、相談後には気持ちが前向きに、軽くなれる様、耳を傾け、アドバイスすることを心掛けております。まずはお気軽に相談ください。
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