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一般就労していたが軽度知的障害で障害基礎年金2級に認められたケース

相談時の状況

義理のお兄様から40歳になる弟さんについてメールでご相談いただき、後日事務所にてお母様と一緒に面談を行いました。

 

社労士による見解

お母様とお義兄様から詳しくお話を伺うと、この方は3歳になっても単語でしかしゃべれず、小中学校は特殊学級でした。

中学に上がった頃から母親に対して頻繁に暴力を振るうようになり、家具や窓ガラスなどもよく破壊していたそうです。

中学卒業後は飲食店の厨房に住込みで働きだしたのですが、仕事を殆ど覚えられず、面倒を見てくれていた社長の奥さんにも乱暴な態度を取るようになったため、約3年でクビになりました。

その後もいろんな仕事に就いてみるものの、どこも長続きしなかったそうです。
喧嘩や痴漢行為を働いて留置場に入れられたり、人に騙されてお金を取られたりすることもたびたびありました。
見かねた義兄が約10年前に病院へ連れていき、知能検査を受けさせたところ、IQ59の軽度精神遅滞であることがわかりました。

その病院へ通院するよう説得されましたが、嫌がっていうことを聞かず、その後は一切受診しなかったそうです。

ご相談いただいた時点では警備員の仕事に就き、何とか一人暮らしをされていましたが、いつクビになってもおかしくない状況でした。
お母様もご高齢で経済的な援助は難しかったため、何とか自立させようとお義兄様が障害年金を受給させようと考えたそうです。

しかしいつ辞めてもおかしくないとはいえ、一応一般就労しながら自活できおり、本人が障害を認めたくないという気持ちから病院にも行きたがらないため、どうすればよいかわからなくなって当センターへご相談いただいたようです。

 

受任してから申請までに行ったこと

約10年前に検査のため受診された病院には、カルテが残っていませんでした。
通常はカルテに基づいて初診日を証明する必要があり、それができなければ障害年金を受給することは難しくなります。

しかし知的障害は生まれた日が初診日として扱われる決まりがあるため、カルテに基づいて証明する必要はありませんでした。

またこの方は一度検査を受けに行ったことがあるだけで、一切通院はしていませんでしたが、知的障害はそもそも治療の必要が無く、審査上も問題ないとご家族に説明しました。

ただし、申請するためには必ず医師の診察を受けたうえで診断書を書いてもらう必要があります。
知的障害や発達障害まで対応してもらえる医師は少なく、受診しようとしてもなかなか予約も取れないことが珍しくないのですが、当センターでは京都市内やその周辺の精神科は大体把握できており、親切にご対応いただけるクリニックを知っていましたので、直ぐにお教えして受診してもらいました。
診断書も直ぐに書いてもらうことができました。

病歴就労状況等証明書を作成する際は、日常生活の困難さだけでなく、就労を継続することがいかに困難な状況かということも、詳しく記載して提出しました。

障害年金は、働きながらでも受給することができる制度とされていますが、残念ながら精神疾患や知的・発達障害などは、認定基準が曖昧なため、働けていると障害状態を軽く判断されてしまい、不支給とされてしまうことがよくあります。

 

結果

無事障害基礎年金2級に、更新の必要が無い永久固定で決まりました。

本来障害年金は就労しながらでも受給できる制度であり、障害認定基準の中にも、「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず・・・」と明記されています。

しかし実際は、一般就労中であったり、以前に長く就労できていた期間があると、障害状態にないと判断されてしまうことが珍しくありません。

そのため病歴就労状況等申立書を作成する際は、「本来は就労することがいかに困難であるのか」ということを、実際の状況に基づいて細かく記載しなければなりません。

特に知的障害は、「IQだけで障害状態を判断しない」と明記されているため、自分の名前も書けないほど重度の障害状態である方でも不支給とされてしまうことがありますのでご注意ください。

社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)

舩田 光朗
舩田 光朗社会保険労務士
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