障害年金の対象とならない病名が複数診断されていたが障害基礎年金2級に認められたケース
相談時の状況
ご本人の婚約者よりメールでご相談いただきました。
ご本人は現在、心理的な原因から、発声と歩行が一切できなくなっておられました。
さらに解離性同一性障害の診断名もついており、別人格が頻繁に出現するため、ご本人と一対一での意思疎通は困難だと判断しました。そこで面談にはご本人だけでなく、婚約者の男性と、昔からご本人の様子をよくご存じの妹さんにもお越しいただきました。
社労士による見解
この方は人間関係のストレスが原因で、約7年前から不眠・食欲不振・原因不明の背中の痛みが出現するようになったそうです。
精神科を受診したところ、自律神経失調症と診断されました。
その後新しい彼氏ができて一旦は落ち着かれたのですが、しばらくすると彼氏に捨てられてしまうような気がして不安になり、情緒不安定となって喧嘩が絶えなくなったそうです。
新たに別の精神科を受診したところ、境界性人格障害と診断されました。
希死念慮が高まって頻繁にリストカットや過量服薬を繰り返すようになったため、閉鎖病棟へ入院させられたそうです。
別人格・幻聴・幻覚などの症状も出現するようになり、その後も入退院を繰り返しておられました。この頃から、解離性同一性障害と双極性感情障害の診断名が付くようになったそうです。
約1年前に交通事故にあい、さらに母親が入院するようになったことにもショックを受けて、失立と失声の状態になりました。
ご本人の病状は深刻で、家族や婚約者の援助がなければ生きていくこともできない状態でしたが、主に日常生活を困難にしている解離性同一性障害や心因反応による失声と失立は、実は障害年金の対象にはなりません。
双極性感情障害としての障害状態を認めてもらう必要がありましたが、この方は情緒不安定だったため主治医と喧嘩してしまうことが度々あったようで、医師からは診断書の作成を嫌がられていました。
医師は診断書作成の依頼を正当な理由なく断ってはならないと医師法に定められていますので、正式にお願いすれば書いて頂けたはずです。しかし精神疾患用の診断書は医師の主観によって書かれてしまう項目が殆どですので、無理やり書いてもらっても実態に則した正しい内容に仕上がらない可能性が極めて高い状況でした。
受任してから申請までに行ったこと
診断書のことだけでなく、ご本人が主治医への不信感から継続して通院することを拒否しておられましたので、評判の良いクリニックをお教えしたところ、そちらへ転医されました。
その後約半年ほど通院されたのちに診断書をお書きいただくことができ、病歴就労状況等申立書をこちらで作成して申請しました。
結果
無事、障害基礎年金2級に認められました。
障害年金は非常に複雑なため、制度について正しくご存じの医師は極めてまれです。ソーシャルワーカーの方にアドバイスを受けながら申請される方もよくいらっしゃいますが、残念ながら経験豊富なソーシャルワーカーさんでも制度について正しく理解されているわけではありませんので、不支給になってしまうケースは数多くあります。
特に精神疾患は、病名に注意する必要があります。神経症やパーソナリティ障害は重症であっても障害年金の対象にならないのですが、そのことをご存じでない医師は大勢いらっしゃいます。
今回のケースですと、日常生活に大きな影響を与えていたのは解離性同一性障害(多重人格)と心因性の失声・失立でしたが、そのことだけに注目して診断書を書かれてしまうと、かなりの確率で不支給とされていたでしょう。
双極性感情障害やうつ病などの障害年金の対象となる病名も同時に診断していたにも書かわらず、医師が良かれと思って症状が酷かった神経症やパーソナリティ障害のことだけを診断書に書いてしまい、不支給とされてしまってから当センターへご相談いただいたことが何度もありました。
そのような結果にならないためにも、まずは専門家へご相談ください。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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当サイトをご覧いただきありがとうございます。当事務所は京都を中心に、府内全域を対象として、障害年金の申請サポートを行っております。(※相談は全国対応です。)
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