双極性障害による障害年金を事後重症で申請して後から遡及請求を追加で行ったケース(事例№5936)
相談時の状況
双極性感情障害を患っておられる30代の女性について、精神病院の相談員さんからご相談いただきました。
相談員さんがご家族へ障害年金の手続きを勧められたのですが、ご家族だけでは対応が困難で、当センターのサポートが必要と判断されたそうです。
社労士による見解
この方は学生時代から人付き合いが苦手で、アルバイト先でもよくいじめられて長続きしなかったそうです。
就職活動もうまくいかず、大学卒業後は家業の手伝いをされていました。
段々と感情の起伏が激しくなっていき、明らかに異常な目つきをしていることに母親が気づいて、約10年前に近くの精神科クリニックを受診させたそうです。
双極性感情障害と診断され、投薬治療を受けておられたのですが症状は悪くなる一方で、自殺未遂も何度かありました。
そのクリニックに数年間は通っておられたのですが、ちょっとした発言から医師の怒りを買い、大声で怒鳴られたことで通院できなくなりました。
その後は約2年間ほど家に引きこもり、どこも受診することなく過ごしておられたのですが、症状がどんどん悪化していったため、家族に連れられて別の精神病院へ通院するようになりました。
現在も気分の浮き沈みが激しく、家族のサポートが無ければ生活できない状態でしたので、障害等級2級に該当する可能性があると感じました。
また、障害認定日(初診日から1年6か月経過した時点)も同程度の状態でしたので、遡って2級に認められる可能性も高いと判断しました。
受任してから申請までに行ったこと
通常は、初診の医療機関にて受診状況等証明書(初診日証明)を作成してもらう必要がありますが、その医療機関で障害認定日時点でも受診があり、認定日まで遡って請求するための診断書を書いてもらうのであれば、その診断書が初診証明の役割を果たすため、受診状況等証明書は必要ありません。
最初のクリニックへこちらから連絡をとり、認定日時点の診断書の作成を依頼しました。
しかし、診断書の作成依頼が立て込んでいるとの理由で、数か月経過してもお書きいただけませんでした。
診断書の作成は、「何カ月以内に書かなければならない」と決められているわけではありませんので、残念ながらこういう場合は、定期的に連絡を取り、まめに催促するしかありません。
月に何度か受付の方に電話をし、何とか早めにお書きいただけないかとその都度お願いをしていたのですが、現在通院されている病院の相談員さんから、主治医が月内で移動になることがわかったと連絡が入りました。
移動前にぜひ自分が診断書を書きたいとおっしゃられているとのことだったのですが、初診証明がとれなければ申請できません。
せっかく移動前にお書きいただいても、現在の障害状態を表す診断書には有効期限がありますので、いつ出来上がってくるかもわからない障害認定日時点の診断書を待っているわけにはいかない状況になりました。
そこで、障害認定日までの遡及請求は後日別で行うことにし、現在の障害状態のみ主張する事後重症請求だけをまずは行うことにしました。
初診のクリニックへ事情を説明し、受診状況等証明書だけをなんとかお書きいただき、現主治医にお書きいただいた診断書を使用して申請したところ、数か月後に障害基礎年金2級の年金証書が届きました。
2級の通知が届いた半年後にようやく障害認定日時点の診断書を作成してもらうことができましたので、追加で障害認定日請求を行いました。
結果
無事、障害認定日時点についても障害基礎年金2級に認められ、5年分が遡って支給されました。
通常、遡及請求を行う場合は、障害認定日と現時点の両方の診断書を提出する必要があります。
障害認定日請求を後回しにするようなやり方が、制度として推奨されているわけでもありません。
しかし、禁止されているわけでもありませんので、今回のようなやむを得ない事情がある場合は、たまにこのような手段を取ることがあります。
年金機構の審査担当者はこのようなやり方もあるということをおそらく認識されているのでスムーズに受け付けてもらえますが、共済組合の場合は、認識されていない方もいらっしゃるようで、過去に何度か断られたことがあります。
その場合は、担当者に説明し、このようなやり方も可能であることを理解してもらう必要がありますので、慎重にご対応ください。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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