初診の医療機関は閉院していたが双極性障害で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№6778)
相談時の状況
10代の頃から双極性感情障害を患っておられる、40代の女性からご相談いただきました。
10代の頃に掛かった唯一の精神科であるクリニックに初診証明を依頼しようとしたところ、廃院になっていることがわかり、どうすればよいかわからなくなって困っておられました。
社労士による見解
この方は子供の頃から人付き合いが苦手で、ずっと生きづらさを感じて来られたそうです。
家庭の事情で、アルバイトをしながら定時制高校へ通っていた18歳の頃に、うつ症状を自覚して近くの精神科クリニックを受診しました。
症状に改善が見られないため、20歳を超えてからいくつかのクリニックを転々とし、30歳を超えてから転医した大学病院の精神科で初めて双極性障害と診断されました。
その後も転医を繰り返しましたが、症状は改善しないままでした。
受任してから申請までに行ったこと
調べたところ初診のクリニックは、ずいぶん前に廃院となっていましたので、証明できるものは何もありませんでした。
その後は短いスパンで複数回転医を繰り返し、30代半ばから大きな大学病院の精神科へ通院するようになりました。
大学病院へ至るまでの通院先はいずれもカルテなどがすでに破棄されており、残されていた一番古い記録が、初診から約20年後に受診した大学病院のカルテでした。
その大学病院で受診状況等証明書(初診証明)を作成してもらったところ、内容の一部に「18歳の時に〇〇クリニックを受診」との記載がありました。
原則として、初診日は一番最初に掛かった医療機関のカルテか、もしくはそれに代わる客観的証拠に基づいて証明することとされており、何も証明できるものがなければ、残念ながら障害年金は受給できません。
最初の医療機関の初診日が証明できなければ、2番目や3番目の初診日が証明できたとしても意味がありません。
しかし、平成27年に厚労省より、初診日証明を緩和するいくつかの通達が出されました。
その中の一つに、次のような内容があります。
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請求者の申立てに基づき医療機関が過去に作成した資料の取り扱いについて請求の5年以上前に医療機関が作成した資料(診療録等)に請求者申立ての初診日が記載されている場合には、初診日と認めることができることとする。
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つまり、障害年金申請を行う5年以上前の記録で、本人の証言による初診日がカルテなどに記載されていれば、本人証言による情報でも初診日と認める、という意味です。
本来は、最低でも「〇年〇月」というところまで特定できなければ初診日の情報として不十分ですが、初診日が年金加入前である20歳前であれば、20歳までに受診したことがわかれば問題ありません。
この方の場合、年月までは特定できませんが、年金加入前である18歳の時に受診したことがわかれば十分ですので、認められる可能性が高いと判断しました。
結果
無事に初診日が認められ、障害基礎年金2級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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