初診日を明確に証明できなかったがなんとか統合失調症で障害基礎年金2級を受給できたケース(事例№5264)
相談時の状況
地域生活支援センターの職員さんから、統合失調症を患っておられる30代男性をご紹介いただきました。
社労士による見解
この方は二十歳になる少し前から、不眠、抑うつ気分の出現に加えて、誰かに見られているような感じがするようになったそうです。
数か月たっても改善が見られなかったため、近くのAクリニックを受診されました。
当初はうつ病と言われたそうですが、しばらくすると統合失調症に診断名が変わり、30歳ごろまで通院されていました。
Aクリニックの医師は高齢だったため、閉院に伴い、紹介状をもらってBクリニックへ転医されました。
しかし約3年後にBクリニックも閉院となったため、Cクリニックへ転医されましたが、そこも2年後に閉院となったため、現在通院中のDクリニックへ転医されました。
障害年金は、初診日を客観的証拠に基づいて明確に証明できなければ、受給することができません。
「発病日」ではなく、「初診日」が重要なのです。
原則は当時のカルテに基づいて、受診状況等証明書(初診日証明)をお書きいただく必要がありますが、カルテが破棄されていても、それに代わる有効な客観的証拠があれば認めてもらえます。
Aクリニックは、年齢的なことを理由に10年以上も前に引退されていましたのでカルテは当然破棄されているでしょうし、そもそもご存命かどうかも不明でした。
BクリニックにはAクリニックの紹介状を持って転医されましたので、内容次第ではその紹介状で初診日を証明できる可能性がありましたが、Bクリニックも数年前に閉院されていましたので、連絡先がわかりませんでした。
受任してから申請までに行ったこと
Bクリニックの医師には、閉院直前に別の相談者の受診に同行してコミュニケーションをとったことがあり、非常に協力的な先生でしたので、連絡さえつけられればなんとかなる可能性があると考えました。
そこで、その医師が所属しておられた医師会の支部へ電話してみました。
受付の方へ事情を説明したところご理解いただくことができ、Bクリニックの医師に取り次いでもらうことができました。
Aクリニックの紹介状も保管しておられましたので、受診状況等証明書と合わせて紹介状のコピーもいただくことができました。
しかしその紹介状の内容を見てみると、Aクリニックの初診日は記載されておらず、発病日が「〇年〇月頃」と記載されているだけでした。
「〇年〇月頃」の時点では20歳を超えており、発病日がその時期なのであれば初診日はそれ以降になるはずです。
これで、初診日が年金制度加入前となる「20歳前障害」なのか、加入後の20歳以降なのか分からないという状況ではなく、20歳以降だと主張できる状況にはなりました。
そのため発病日以降が一貫して国民年金だったのであれば、障害基礎年金は年金額が一律ですので、この方は初診日を明確に証明できなくても、「国民年金加入期間のどこかに初診日がある」ということになりますので、初診日を証明したと同じ事になるはずです。
しかし実際は発病の3年後に、数か月だけなのですが厚生年金加入期間がありましたので、厳密には「一貫して国民年金」だといえない状況でしたが、これ以上は何も証拠が見つかりませんでしたので、ダメもとで申請してみました。
結果
何とか初診日を認めてもらうことができ、障害基礎年金2級に決まりました。
初診日を認めるかどうかは、年金機構側の認定医が医学的な見地から判断されます。
「医学的な見地」と書きましたが、要するに認定医の「主観」です。
担当する認定医のアタリハズレによって、判断も異なるのです。
このことは、令和2年10月に新聞などで、「一部のケースについて2人の認定医に審査させたところ、約4割は異なる結果となった」と報道されています。
非常に残念で、腹立たしい限りです。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
-
当サイトをご覧いただきありがとうございます。当事務所は京都を中心に、府内全域を対象として、障害年金の申請サポートを行っております。(※相談は全国対応です。)
「相談して良かった」「やるべきことが明確になった」と、相談後には気持ちが前向きに、軽くなれる様、耳を傾け、アドバイスすることを心掛けております。まずはお気軽に相談ください。
- 11月 15, 2024精神の障害統合失調症で障害基礎年金2級に5年遡って認められたケース(事例№6866)
- 11月 8, 2024肢体の障害指が全く動かせないのに不支給とされたが審査請求で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№6628)
- 11月 1, 2024精神の障害軽度知的障害で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№6860)
- 10月 25, 2024内臓系の障害マルファン症候群からの慢性心不全で障害厚生年金3級に認められ5年遡及も出来たケース(事例№6560)
関連記事
クイックタグから関連記事を探す
「統合失調症・統合失調感情障害」の記事一覧
- 統合失調症で障害基礎年金2級に5年遡って認められたケース(事例№6866)
- 重度の統合失調症だが初診日を証明できず困っておられたケース(事例№6829)
- 統合失調症で一度不支給になっていたが再チャレンジで障害基礎年金2級に認められたケース(事例№6782)
- 統合失調症で障害基礎年金2級に決まり遡りも認められたケース(事例№6575)
- 統合失調症で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№6463)
- 初診時点に学生で任意加入していなかったため統合失調症で特別障害給付金を受給したケース(事例№6327)
- 以前は人格障害と適応障害の診断を受けていたが統合失調症で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№6148)
- 過去に2つの精神科を受診していた時期があったが社会的治癒が認められたケース(事例№6073)
- 一度不支給とされたが再チャレンジで障害基礎年金2級に認められたケース(事例№5950)
- 1回の往診のみで統合失調症により障害基礎年金1級に認められたケース(事例№5737)
- 医師から無理だといわれて諦めていたが5年遡及で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№5387)
- 窓口で初診日を証明できないかもと言われていたが障害厚生年金2級に認められたケース(事例№5867)
- 生命保険の診断書で初診日を証明し統合失調症で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№5348)
- 統合失調症で障害基礎年金2級に認められ5年分の遡及も行われたケース(事例№5271)
- 初診の医療機関は10年前に廃院となっていたが妄想性障害で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№697)
- 統合失調感情障害で5年遡及分を不支給から障害厚生年金3級に変更できたケース(事例№444)
- 保険料の滞納が多くあったが統合失調症で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№920)
- 軽度知的障害のあるご本人が医療機関を混乱させていたが障害基礎年金2級に認められたケース(事例№256)
- 性同一性障害に悩んで発症した統合失調症で障害厚生年金2級に認められたケース(事例№1437)
- 器質性統合失調症様障害で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№172)
- 重度PTSDが原因の鑑別不能型統合失調症で障害基礎年金1級に認められたケース(事例№34)
- 統合失調感情障害の初診日を第三者証明だけで証明して障害基礎年金2級に認められたケース(事例№456)
- 非定型精神病で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№454)
- 統合失調症で障害年金請求しようとしたが初診日を証明できなくて困っておられたケース
- 【統合失調症で障害基礎年金2級】一度不支給となったが当センター依頼後受給できたケース
- 一度も医師に会うことなく統合失調症で障害基礎年金1級に認められたケース
- 統合失調症で障害基礎年金1級に認められ5年遡及も行われたケース
- 病識の無い統合失調症で医師に誤解されていたが障害基礎年金2級に認められたケース
- 初診の医療機関は廃院となっていたが統合失調症で障害厚生年金2級に認められたケース
- 統合失調感情障害での障害年金申請を別の社労士に依頼していたが、信用できないとして途中から依頼してこられたケース
- 20歳前からの統合失調感情障害で障害基礎年金2級に認められ遡及も行われたケース
- 統合失調感情障害で障害厚生年金2級に認められ5年遡及も行われたケース
- アスペルガー症候群と統合失調症で障害基礎年金2級に認められたケース
- 統合失調症で障害厚生年金1級に認められたケース
- 統合失調感情障害で障害基礎年金2級に認められたケース
- 内科受診が統合失調症の初診と認められ障害厚生年金2級を受給できたケース
- 休職中に申請して統合失調症で障害厚生年金2級に認められたケース
- カルテ記載ミスで初診日を証明できなくなりかけたが統合失調症で障害厚生年金2級に認められたケース
- 10代の頃からの統合失調症で障害基礎年金2級に認められたケース
- 関連が薄いと思われた受診が初診に認められ統合失調症で障害基礎年金2級を受給できたケース
- 医師に認識を改めてもらい障害基礎年金2級に認められたケース
- 統合失調症で障害基礎年金2級に認められ5年遡及も行われたケース
- 統合失調症で障害基礎年金2級を受給できたケース
- 統合失調症で障害基礎年金2級に認められ5年遡及も行われたケース
- 知的障害の疑いがある統合失調症の方からご相談いただいたケース
- 改善しつつある統合失調症で障害基礎年金2級を受給できたケース
- 審査に通らない病名で診断書を書かれたが障害厚生年金3級に認められたケース
- 妄想性障害で障害基礎年金2級に認められたケース
- 不支給決定を覆し、再発時を初診として障害厚生年金2級に認められたケース