障害年金の請求を自分でしたが返戻でカルテの提出を求められ困っていたケース(事例№7164)
相談時の状況
双極性感情障害を患っておられる30代の女性からご相談いただきました。
自分で手続きを行い年金事務所で申請をされましたが、数か月後に返戻があり、カルテのコピーを提出するよう指示があったそうです。
何か疑われているのではないかと強い不安に襲われ、主治医に相談されたところ、当センターへ相談してみるよう勧められたとのことでした。
社労士による見解
この方は、主治医から勧められて障害年金の手続きを行ったそうです。
診断書の内容を見たところ、特に問題はありませんでした。
病歴就労状況等申立書は自分で書かれたそうですが、過去のことを思い出そうとするとパニック発作などがでてしまうとのことでした。
そのため、診断書に記載されている内容をほとんどそのまま転記して提出しようとしたところ、年金事務所の窓口担当者から内容の薄さをしてきされ、その場で仕事のことなどを詳細に追記させられたそうです。
数か月後に、障害認定日から現在までのカルテコピーと、障害認定日時点と現時点についての「日常生活及び就労に関する状況について」という、病歴就労状況等申立書の補足資料のような書類の追加提出を年金事務所から求められました。
このことでご本人は、「自分を落とそうとしているのではないか」「何か疑われているのではないか」と感じ、強いショックを受けておられました。
「落とそうとしているのではないか」という考えは、実は正解です。
より詳細な情報を提出させ、あら捜しすることが審査側の目的です。
令和6年度は、とにかく頻繁にカルテコピーの提出を求めてきました。
前年度まではなかった動きで、病院からも「いままでそんなことは言われたことがない」と不信感を露わにされるほどでした。
精神科は、2回目の受診以降は5分診療が基本ですので、毎回詳細な報告ができるわけではなく、特定の期間のカルテだけを切り抜いても、日常生活状況や障害状態を把握できるわけではありません。
特に発達障害や知的障害は、状態が変化するわけではないので、よりその傾向は強まります。
このような実態を無視して、抽出した期間のカルテに大したことが書いて無ければ、「障害は軽度」との烙印を押されてしまうことが何度もありました。
今回のケースも、審査担当がこの方だけに不信感を抱いたわけではなく、まんべんなく振るいにかけようとする動きに巻き込まれただけだと思います。
公平性を欠いた審査をやりすぎ、前年度と比べて不支給率が2倍に跳ね上がったことが報道されたため、その後はカルテコピーを求められることがほとんどなくなりました。
受任してから申請までに行ったこと
医師にお願いして、カルテのコピーをいただきました。
内容を拝見すると、普段からよくお話を聞いてくださる先生のようで、障害を軽度と誤解されてしまいそうな箇所はありませんでしたが、初診日と主張していたよりも数年前に、一度だけ他院を受診しておられたことが判明しました。
このまま提出すると、新たに発覚した医療機関で受診状況等証明書(初診日証明)を取得するよう指示されることは明らかで、その時点が初診になると障害認定日(初診日から1年6か月経過した日)時点では受診がなかったため、障害認定日までの遡りは諦めなければならなくなる可能性が出てきました。
しかし当時の受診は1回だけで、その後は問題なく社会生活を営めていましたので、社会的治癒が主張できると考えました。
自主的に追加で受診状況等証明書を取得し、社会的治癒を主張する旨を病歴就労状況等申立書に追記し、カルテコピーを一緒に提出しました。
結果
初診日を変更されることなく当初の主張通りに遡及も認められ、障害基礎年金2級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)

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