双極性障害で社会的治癒が認められ障害厚生年金2級に決まったケース(事例№6629)
相談時の状況
双極性感情障害を患っておられる30代の女性からご相談いただきました。
国民年金の障害基礎年金ではなく、障害厚生年金を受給したいので、厚生年金に加入していた時期が初診にならないか、とのご相談でした。
社労士による見解
この方は子供の頃から人間関係が苦手で、中学生になると学校を休みがちになったそうです。
高校に進学すると抑うつ症状も出現するようになったため、精神科へ通院するようになりました。
投薬治療の効果で症状は改善したため約1年で通院は一旦終了しましたが、高校卒業後に就職すると職場で人間関係のトラブルを度々起こし、数か月で転職することを繰り返しました。
高校生のときに通院していた精神科へ再び通うようになりましたが、医師に対しても攻撃的となって、転医を繰り返すようになりました。
しかし20代半ばで就職した会社は人に恵まれ、多少の浮き沈みはあったももの概ね安定して過ごせるようになったため、病気が治ったと自己判断して通院をやめたそうです。
その後約5年間は比較的落ち着いて過ごすことができていましたが、転職をきっかけに症状が再燃し、周りの人を攻撃したり、突然海外へ行こうとしたりするなどの異常行動が出てきたため、自身で再発を疑い精神科への通院を再開しました。
その後も短期間で転医を繰り返しておられ、症状に改善も見られないため、仕事は休職されていました。
原則だと精神的な症状について初めて医師の診療を受けた日が初診日ですが、一旦投薬治療などの必要が無いほど症状が改善し、その後長年に渡って社会生活を問題なく営めていた場合は、再発した時点を初診日と判断してもらえる可能性があります。
これを、「社会的治癒」といいます。
双極性障害の方は躁状態になると元気になり、症状が改善したと感じて通院を自己中断されてしまうケースがよくありますが、その後再びうつとなり、しばらくするとまた躁転して、という状態を繰り返しますので、残念ながら治ったわけではありません。
そのため通院していなかった期間があっても、必ずしも社会的治癒が認められるわけではないのですが、この方は約5年に渡って治療を受けることなく仕事も続けられていましたので、認められる可能性があると考えました。
受任してから申請までに行ったこと
社会的治癒を主張する予定でしたが、原則通りの初診日も証明できることをアピールするため、高校生の頃に通院していた精神科でも受診状況等証明書(初診日証明)を取得しました。
診断書を依頼する際は、高校時と社会的治癒を主張する時点の両方の受診状況等証明書コピーに添えて、社会的治癒を主張する旨や現在までの経緯などを参考資料にまとめ、医師にお渡しいただきました。
病歴就労状況等申立書を作成する際は、社会的治癒に該当する状態であることの説明も記載しておきました。
結果
無事に社会的治癒が認められ、障害厚生年金2級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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