不支給決定を覆し、再発時を初診として障害厚生年金2級に認められたケース
ご相談にいらした状況
統合失調症で入院しておられる方のご家族よりお電話でご相談いただき、後日無料相談会へご参加いただきました。
社労士舩田による見解
ご両親とお姉様から詳しくお話を伺ったところ、数年前にお父様が障害年金の手続きを行われたそうなのですが、結果は不支給でした。
初診日として主張した年月日は年金に加入していなかった時期でしたので、申請は受理されたものの、被保険者ではなかったため受給する資格が無いというのが不支給の理由でした。(この方は当時大学生だったのですが、平成3年3月31日まで大学生は強制加入の対象とされておらず、国民年金に任意加入しなければ被保険者になれませんでした)しかも初診から5回病院を変わっておられたのですが、全てカルテは破棄されており、初診日時点が被保険者であったとしても、客観的に証明する証拠がないため間違いなく認定は降りないはずでした。(障害年金制度において、初診日は原則カルテに基づいて証明しなければなりません。 カルテが無い場合は、客観的に証明できるような別のものを提示しなければ認められません)
初診日時点で被保険者で無かったことと、現在通院している病院以外のカルテが全て破棄されていたことからご家族には困難であることをお伝えしたのですが、統合失調症の症状が酷く、社会復帰も絶望的であるため、何とかもう一度チャレンジすることを強く希望されましたので、当センターでサポートをすることにいたしました。
受任から申請までに行ったこと
発症から現在までの状況を詳しく聞き込んでいくと、約20年前に一度寛解し、その後約8年ほど会社勤めもできていたことが分かりました。そのため社会的治癒を主張し、厚生年金に加入していた再発時点を初診日として進めてみることにしました。実は障害年金には、社会的治癒という概念が存在します。社会的治癒とは、医学的に治癒したわけではないが症状が出ておらず、治療の必要が無くなって普通に社会生活を送れるようになった状態のことを言います。明確な規定があるわけではありませんが、通院しておらず、会社勤めなどを最低でも5年以上できていたような場合に認めらることがあります。
しかしこの社会的治癒は証明することが非常に難しく、特に精神疾患の場合は主張しても殆ど認められません。そのため精神疾患で社会的治癒を主張して進めることは極力しないのですが、残念ながらこの方の場合は他に方法がありませんでした。とにかく社会的治癒を認めてもらうには客観的な証拠を数多く提出する必要がありますので、問題なく働けていたことを証明するために約8年間の賃金台帳のコピーを全て取りました。社員旅行で海外に行かれた時の写真も残っていましたので、それも資料として付けました。さらに寛解以降で生命保険にも入っておられましたので、その証書のコピーも付けました。
しかしこの方にはもう一つ大きな問題がありました。再発時点を初診日と認めてもらえたとしても、その時点の病院は既に廃院となっており、カルテが存在しませんでした。いくら社会的治癒を認めてもらえたとしても、再発時のカルテが無ければそこを初診日として証明できません。ご家族にご協力いただき、家に残っていた書類を洗いざらい調べてもらったところ、再発した数年後に傷病手当金を申請したことがあり、当時の医師が掛かれた診断書が見つかりました。そこには初診日が明記されていましたので、客観的証拠として認めてもらえる可能性が高いと考え、その診断書のコピーを資料として提出しました。
ところが、あらゆる手を尽くして申請したにも拘わらず、結果は不支給でした。その理由は、数年前に申請した際既に不支給との決定をしているため、というような内容でした。社会的治癒を主張して様々な資料を添付していたはずなのに、よく内容を吟味せずに判断されてしまっていると感じましたので、直ぐに審査請求(不服申立)をおこないました。
結果
審査請求から約5か月後に社会保険審査官より、処分を変更して障害厚生年金2級に認めるとの連絡がありました。最初にご家族よりご相談いただいたときから1年以上も掛かってしまいましたが、何とか最高の結果を出すことができました。上記内容からお分かりいただけるかと思いますが、障害年金の申請は非常に複雑です。ご自身で進められる場合は年金事務所の相談窓口へ行き、窓口担当のアドバイスを受けながら進めることになるのですが、その担当者が障害年金のことを詳しく知っているとは限りません。
またこの方が最初に申請された時も、初診日時点で被保険者ではなかった時点で100%不支給となることがわかっていたはずなのに、何の説明もなく受付されています。こうなってしまう前に、まずは専門家へご相談いただくことをお勧めします。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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