慢性疲労症候群で初診日を国民年金の時期に変更されそうになったが障害厚生年金で受給できたケース(事例№7004)
相談時の状況
機能性低血糖症と診断されている30代の女性から、お電話でご相談いただきました。
しかし機能性低血糖症の診断は便宜上のもので、副腎疲労症候群や慢性疲労症候群の疑いもあると言われているとのことでした。
社労士による見解
この方は約5年前から異常な疲労感を感じるようになり、日によっては起き上がることすらできなくなることがあったそうです。
異常を感じて総合病院の脳神経内科を受診し、血液検査やCT検査を受けましたが、異常は見つかりませんでした。
しかし症状は継続していたため、近くの耳鼻科や内科などを10か所以上も受診しましたが、原因は判明しませんでした。
1年前から通院している内科クリニックでようやく、便宜上とはいえ前述の診断名が付いたそうです。
現在はほとんど起き上がることもできない状態が続いており、退職して自宅で横になって過ごしているとのことでした。
障害年金の等級審査は、障害認定基準に照らし合わせて審査されます。
認定基準は、様々な傷病や障害の箇所によって細かく定められていますが、傷病や障害の種類は星の数ほどありますので、すべての病気について規定されているわけではありません。
対象者が多い障害、例えば、心臓疾患や肝臓疾患、手足の障害や精神病などであれば、かなり細かく定められていますが、機能性低血糖症や副腎疲労症候群は、おそらく障害年金請求が行われた事例自体が極めて少なく、当然障害認定基準も専用もものはありません。
障害の分類も、どこにも当てはまらない「その他」の扱いとなり、審査もかなりアバウトなものになってしまいます。
しかし同じ症状がでていても、慢性疲労症候群であれば、公平な審査が行いやすいよう数年前に明確な基準が年金機構から提示されましたので、機能性低血糖症などよりも公平な審査が受けやすくなります。
上記を踏まえたうえでご本人から医師に再度病名を確認してもらったところ、慢性疲労症候群の可能性は確かにあるとご判断いただけ、診断書は「慢性疲労症候群の疑い」として作成していただけることになりました。
受任してから申請までに行ったこと
障害年金の初診日は、専門医にかかった日や病名が付いた日などではなく、関係があると思われる症状について初めて医師の診療を受けた日のことです。
ですので、精神障害やほかの内科系疾患であれば特定しやすいのですが、慢性疲労症候群の場合は、原因不明で、いくつもドクターショッピングを繰り返してようやく診断名が付くことの多いので、初診日の特定が難しい傷病です。
そのため以前は、どれだけ以前からその症状を医師に診てもらっていても、慢性疲労症候群と診断された医療機関が初診と判断されてしまう審査機関内での暗黙の了解が長く続いていました。
しかし厚生労働省はその問題を認めて令和3年に、他の障害と同様にその症状を初めて訴えた時点を初診日として扱うよう事務連絡を出しました。
そのため、今回は疲労感を初めて医師に訴えた約5年前の厚生年金加入時期を初診日として主張することにしました。
診断書を医師にお書きいただく際は、慢性疲労症候群の審査基準や、正しい書き方を参考資料としてまとめ、受診時にお渡しいただいたところ、「慢性疲労症候群の疑い」として問題のない内容でお書きいただけました。
ところが、病歴就労状況等申立書もこちらで作成し提出したところ、数か月後に障害年金センター(審査機関)から連絡がありました。
前述の厚労省からのお達しがあったにも関わらず、「慢性疲労症候群の疑い」と初めて診断した現在の医療機関を受診した日が初診日と認定したとのことでした。
そうなると、初診日時点では国民年金の被保険者であり、障害基礎年金の対象とされてしまいます。
事情を本人に説明したところ、厚生年金加入期間中に、海外在住の日本人医師の診療をオンラインで受けたことがあることを思い出されました。
そのオンライン受診は数回だけだったそうですが、慢性疲労症候群の可能性を示唆されたとのことでしたので、メールで医師とやりとりをしてみたところ、その旨を証明していただけることになりました。
受診状況等証明書の入力フォームをメールで医師に送信し、ご入力いただいたものをプリントアウトして年金機構へ追加提出しました。
結果
無事にオンライン受診した時点が初診日と認められ、障害厚生年金2級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)

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