クローン病で障害厚生年金3級に認められたケース(事例№7053)
相談時の状況
長年クローン病を患っておられる、50代の女性からご相談いただきました。
クローン病の患者会などで話を聞き、以前から障害年金の存在は知っておられたそうですが、自分は無理だと諦めていたそうです。
ご家族から、一度専門家へ相談してみてはどうかと勧められたとのことでした。
社労士による見解
この方は20代前半ごろに、おなかの調子がおかしいと感じて近くの内科クリニックを受診されたそうです。
投薬治療を受けてもよくならなかったため、総合病院を紹介されて受診したところ、クローン病と診断されました。
その後は入退院を繰り返し、仕事もフルタイム勤務はできなくなったため、パートで働くようになりました。
10年前に人工肛門造設術を受けることとなり、現在の病院へ転医されました。
まず、ストマをつけておられる場合は、障害認定基準上3級に該当します。
3級ですと、障害厚生年金なら受給できますが、初診日時点で国民年金被保険者だった場合は等級が2級からしか対象にならない障害基礎年金となり、受給できません。
この方は、おそらく最初に受診された内科クリニックが初診で、その時点では正社員で働いておられましたので、障害厚生年金の対象でした。
そうなると、内科クリニックでの初診日を証明しなければなりません。
原則、初診日の証明はカルテに基づいて行うこととされていますが、カルテは5年以上経過すれば破棄してもよいと法律で定められています。
30年も前のことでしたので、おそらく内科クリニックのカルテはすでに存在しない可能性が高いと判断しました。
しかし、この方はその内科クリニックからの紹介で総合病院へ転医され、そこに20年近く通院されていましたので、総合病院のカルテが破棄されていなければ、内科クリニックで作成された紹介状が保管されており、それによって初診日を証明できる可能性が高いと判断しました。
受任してから申請までに行ったこと
最初の内科クリニックではやはりカルテが破棄されていましたので、2つ目の総合病院へ確認しました。
すると、残念ながらそちらもすでに破棄されており、クリニックの紹介状も残っていませんでした。
そのため、現在通院中の病院へお願いして、総合病院にて作成された紹介状のコピーをいただいてみました。
内容を拝見したところ、初診に関しては「平成〇年頃から他院にて通院治療」という記載しかありませんでした。
障害厚生年金は、月単位で年金額を計算されますので、最低でも「〇年〇月」というところまで証明できなければ初診日は認められません。
紹介状だけでは証拠として不十分だと判断し、いろいろ探してもらってみたところ、臨床調査個人票に「発症日平成〇年〇月」という記載を見つけました。
障害年金上で重要なのは、発症日ではなく初診日です。
発症と同時に受診したとは限らないので、本来ダメなのですが、それ以上の証拠は何も見つからなかったため、「平成〇年頃」と書かれた紹介状と合わせて提出してみることにしました。
病歴就労状況等申立書では、臨床調査個人票に書かれた日付が初診日であると強調しておきました。
結果
何とか初診日が認められ、障害厚生年金3級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)

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