約30年前の初診時カルテが破棄されていたケース(事例№5103)
相談時の状況
Ⅱ型糖尿病を原因とする腎不全で、数か月前に人工透析を受け始めた50代男性からご相談いただきました。
社労士による見解
この方は約30年前に職場の健康診断で指摘を受け、健診を実施した病院を受診してみたところ、Ⅱ型糖尿病を発症していることがわかりました。
初診の病院へ継続して通院されていましたが、徐々に腎機能が低下していき、2年前に腎不全となって大きな病院へ転医したそうです。
現在は別の人工透析専門のクリニックで、週3回人工透析を受けておられました。
障害年金は、原則として初診日をカルテに基づいた受診状況等証明書を提出し、明確に証明する必要があります。
ところがカルテは、受診から5年以上経過すると破棄してもよいこととされており、年数が経過すればするほど破棄されている可能性が高くなります。
カルテが無い場合は、それに代わる客観的証拠を提出して明確に証明する必要があり、それができなければ、残念ながらどれほどひどい障害状態であっても障害年金は支給されません。
この方は初診から30年近くも経過していましたが、同じ医療機関に2年前まで通院しておられましたので、カルテは残されている可能性が高いと判断していました。
受任してから申請までに行ったこと
ところが問い合わせてみると、予想に反してカルテは破棄されており、初診に関する証明は病院に一切残されていませんでした。
このままでは、障害年金を受給できません。
カルテに代わる客観的証拠が何かないかご自宅を探してもらったところ、当時の健康診断結果通知書がでてきました。
以前は、健康診断で「要治療」などの結果が出ている場合は、健康診断を受けた日が初診日と判断されるケースが多くありました。
しかし平成27年9月に出された省令により、『健診日は初診日として取り扱わない』こととされました。
そのため原則として健診記録では初診証明とならないのですが、省令には次のことも記載されています。
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ただし、初めて治療目的で医療機関を受診した日の医証が得られない場合であって、医学的見地からただしに治療が必要と認めらえる健診結果である場合については、請求者から健診日を初診日とするよう申立てがあれば、健診日を初診日とし、健診日を証明する資料を求めた上で、初診日を認めることができることとする。
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ただし、初めて治療目的で医療機関を受診した日の医証が得られない場合であって、医学的見地からただしに治療が必要と認めらえる健診結果である場合については、請求者から健診日を初診日とするよう申立てがあれば、健診日を初診日とし、健診日を証明する資料を求めた上で、初診日を認めることができることとする。
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この方の健診結果を見ると、HbA1Cの数値が8%を超えており、精密健診結果に「糖尿病」と書かれていましたので、健診結果だけで充分初診日は認められると判断しました。
結果
無事、障害厚生年金2級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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