糖尿病性腎症の初診日を2つの証拠を合わせて証明し障害厚生年金2級に認められたケース(事例№295)
相談時の状況
糖尿病性腎症から腎不全となり、数か月前から人工透析を開始された50代男性からご相談いただきました。
社労士による見解
詳しくお話を伺うと、この方は30歳前後から職場の健康診断で糖尿病の可能性を指摘されていたそうです。
しかし自覚症状が無かったため、病院には行かずほったらかしにされていました。
今から約15年前より異常なのどの渇きを自覚するようになり、近くの総合病院を受診したところ、やはり糖尿病と診断されました。
その後は通院して投薬治療を受けていたのですが、自覚症状が無いため数年で通院を止めてしまいました。
約5年前に目が見えにくくなったと感じて近くの眼科を受診したところ、眼底出血が確認され、糖尿病性網膜症を発症していることがわかりました。
これをきっかけに糖尿病の治療を再開しましたが、数か月前から腎機能が急速に低下してしまい、人工透析を始めることになったそうです。
腎不全により人工透析をされている方は、原則として障害等級2級以上に該当します。
しかし障害年金はそれだけで受給できるわけでは無く、いくつもの問題をクリアーしなければなりません。
この方の場合は、初診日を証明できるかどうかが問題でした。
受任してから申請までに行ったこと
この方は30歳前後から健康診断で糖尿病の可能性を度々指摘されていましたが、受診はしていませんでした。
以前はこの健康診断を受けた日が初診と判断されることもありましたが、平成27年に『健康診断は原則として初診日としない』とする改正がありましたので、何度指摘されていても健康診断は関係ありません。
前述の約15年前に口渇の症状で初めて受診した日が初診と判断し、病院へ問い合わせてみましたが、既に当時のカルテは破棄されていました。
しかしご本人から、当時その病院の紹介で大きな大学病院を受診したことがあると聞いていました。
その際に紹介状を書いてもらっているはずで、大学病院にそれが残っており、内容に初診日が記載されていれば、それで初診日を証明できると考えました。
直ぐに大学病院で受診状況等証明書を作成してもらい、当時の紹介状コピーも付けてもらいましたが、『平成〇〇年から○○病院で治療開始』とは書かれていたものの、『なん月か?』まではわかりませんでした。
障害厚生年金は、初診日の時期によって年金額が変わります。
そのため最低でも、「月」まで証明できなければ認められません。
そこで、カルテ以外の情報が何か残っていないか、初診の病院の医事課にお邪魔して詳しく伺ってみると、当時血液検査を実施した記録がありました。
医事課の方にお願いして、「何年何月何日に血液検査を行った」という旨を記載していただき、客観的証拠の一つとして、大学病院の紹介状コピーと合わせて提出しました。
結果
無事、障害厚生年金2級に決まりました。
糖尿病が原因で腎不全となり、人工透析をされている場合は、糖尿病で初診日を判断します。
ところがこういった場合は、糖尿病から数十年経過してから人工透析に至ることが大半ですので、当時のカルテは破棄されてしまい、初診日を証明できなくて障害年金を受給できないケースは数多くあります。
こちらでサポートさせてもらっても、証拠が何も見つからなければ、残念ながら障害年金を受給することはできません。
折角こちらへご相談いただいても、お話を伺ったうえで不可能と判断し、お断りすることもあります。
しかし今回のように、有効な証拠が見つかれば受給できるようになることもありますので、まずは一度ご相談いただければと思います。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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