重度の統合失調症だが初診日を証明できず困っておられたケース(事例№6829)
相談時の状況
統合失調症を長年患っておられる50代の女性入院患者について、病院の相談員さんからご相談いただきました。
初診日は30年も前で、当時のカルテやそれに代わる記録が残っていないか病院へ確認されたそうですが、何もなかったそうです。
社労士による見解
この方は看護師をされていたそうですが、約30年前にお子さんを出産してから情緒不安定となったそうです。
隣家の住人が悪口を言っていると壁を叩くようになり、しばらくすると隣家に忍び込んで暴れて警察沙汰になったため、夫が無理やり総合病院の精神科へ連れて行ったところ、そのまま入院となりました。
落ち着いたため2カ月ほどで退院しましたが、その後も独語や空笑が見られ、職場の病院でも異常行動が度々見られました。
数年後には突然家を飛び出して放浪したり、「世界恐慌が起こる」と言い出して子供を学校に行かせなくなったりしたため、夫が主治医に相談したところ、別の精神病院を紹介されて入院しました。
退院後は別の精神科クリニックを紹介され通院治療を受けていましたが、異常行動はなくならず、約10年前からは夫とも会話による意思疎通ができない状態まで悪化していました。
夫は仕事を辞めて常に自宅で面倒を見ていましたが、数か月前に大病を患って入院することになりました。
入院後に地域包括支援センターにお願いして自宅の様子を見に行ってもらったところ、本人は話しかけても反応すらせず、尿・便失禁状態で座り込んでいたため、現在の精神病院へ即入院となりました。
強い陽性症状が続いており、投薬をしても症状は治まらないそうです。
もちろん病識はなく、たまに会話できることもありましたが、大半は意思疎通不可能な状態でした。
今後のためにも何とか障害年金を受給させたいと相談員さんが動かれたのですが、初診日を証明することができない状況と判明し、困っておられました。
しかし自宅を探してもらったところ、初診の総合病院へ提出された「入院同意書」の控えが見つかりました。
記入項目は同意年月日と氏名・住所・生年月日くらいしかありませんでしたが、当時の状況から考えて同意即入院となったはずなので、「同意日=初診日」と主張できると考えました。
また、入院した診療科の記載はありませんでしたが、「精神保健法の規定に基づき入院に同意する」との印字がありましたので、精神科に入院したことは明らかでした。
受任してから申請までに行ったこと
入院同意書以外は何も証拠が見つかりませんでしたので、これを唯一の客観的証拠として初診日を主張することにしました。
診断書をお書きいただく際は、現在の医師は過去の状況をほとんど把握できていないとのことでしたので、ご主人にヒアリングを行い、今までの経緯を参考資料として詳細にまとめたものを、相談員さんから医師へお渡しいただきました。
すると、事実に基づいた正しい内容の診断書をお書きいただくことができました。
病歴就労状況等申立書も、ご主人からのヒアリング内容に基づいて詳細にまとめました。
結果
無事に入院同意書だけで初診日が認められ、障害基礎年金1級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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