てんかんの初診日を日記やスケジュール帳の記録で証明して障害基礎年金2級に認められたケース
相談時の状況
脳腫瘍が原因でてんかんなどを発症された、40代前半の男性からご相談いただきました。
当センターのことは、難病連の職員さんから紹介されたそうです。
社労士による見解
この方は18年前に交通事故に会い、救急搬送されました。
その時のケガは大したことなかったのですが、事故があってから頭痛が続くようになり、頭を打った影響かと考えて脳外科を受診されました。
ところがMRI検査を受けたところ、頭痛は事故によるものではなく、その前から脳髄膜腫を発症していたことがわかりました。
直ぐに手術で腫瘍を取ってもらいましたが、その1年後くらいから激しい頭痛や吐気に襲われるようになり、他院で脳波検査を受けたところ、てんかんと診断されました。
約5年前からは強迫症状やうつ症状も出るようになり、軽いてんかん発作もたまにあったため、就労できない状況が続いておられました。
この方はまず、てんかん発作のタイプや頻度から考えると、障害等級3級に該当するかどうかも微妙でした。
もう一つの診断名は「強迫性障害」で、こちらは原則として障害年金の対象外とされてしまう病名でした。しかし抑うつや希死念慮などの精神病の病態と判断できる症状がでていましたので、両方合わせれば障害等級に該当する可能性はありましたが、少し厳しい状況でした。
それ以上に問題だったのが、初診日の証明についてでした。
初診で掛かられた医療機関は、カルテなどの記録を5年しか保管しない病院だと以前から知っていましたので、その病院で初診証明(受診状況等証明書)を作成してもらうことは不可能と判断しました。
受任してから申請までに行ったこと
初診日が20歳より前にあり、初診日を客観的に証明できるものが無い場合は、2人以上の第三者(三親等以内の親族はダメ)に、年金機構所定の様式で「第三者証明」を書いてもらうことで、初診証明の代わりに提出することができるとされています。(ただし必ず認められるわけでは無い)
平成27年10月からは、20歳以降に初診日がある場合も「第三者証明」を使用できることとされました。(ただし20歳以降の初診は、別の客観的証拠も添付する必要があります)
この方は残念ながらご協力いただける第三者が見つからなかったのですが、お母様が付けておられた日記に、頭痛を訴えて病院へ行かれたことについて記載が見つかりました。
ただの頭痛であれば日記に書くほどではない事柄のはずでしたが、おそらく交通事故後の症状だったため、心配して記録されたのだと思います。
また、ご本人が当時書かれたスケジュール帳も見つかりましたので、この2つを初診日の証拠として進めました。
結果
無事初診日が認められ、障害基礎年金2級に決まりました。
障害状態については、出来上がってきた診断書を見ても2級には届かない可能性が高いと感じたのですが、何とか受給できてよかったです。
障害年金を申請する上で、初診日の証明は必ずクリアーしなければならない問題です。
初診日は原則として当時のカルテに基づいて証明しなければなりませんが、5年以上経過していると破棄されている可能性があります。
カルテが破棄されている場合は、それに代わる有効な証拠がなければ、どれだけ酷い障害状態にある方でも障害年金は支給されません。
不十分な証拠で申請しても、審査に通ることはありませんので、まずは専門家へご相談いただくことをお勧めします。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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