両側性感音性難聴で障害厚生年金1級に認められたケース(事例№7051)
相談時の状況
遺伝性の難聴を患っておられる50代の男性について、妹さんからご相談いただきました。
最近障害者手帳の手続きを行う際に、障害年金の存在を知ったそうです。
社労士による見解
この方のお母様も感音性難聴だったそうです。
いずれは自分もそうなるのではないかと思いながら過ごしておられました。
30歳頃に難聴を自覚し、おそらくは母と同じであろうと考えて、しっかり検査をしてもらえるよう近隣の耳鼻科ではなく、大学病院の耳鼻咽喉科を受診されました。
検査を受けたそうですが、しばらく様子を見るよう言われ、数回の受診で中断しました。
その後も聴力が徐々に低下していったため、数年後に別の病院を受診し、数か月後に人工内耳手術を受けました。
現在は両耳ともほとんど聞こえない状態まで症状が進行していました。
聴力障害は、両耳の聴力レベルが100デシベル以上だと1級に認められます。
ただし注意が必要なのは、通常はオージオメータによって測定した数値のみで判断されるのですが、以前から2級もしくは3級の障害年金を受けておらず、いきなり1級相当の障害状態を主張する場合は、聴性脳幹反応検査などの他覚的聴力検査結果も問われる点です。
これは、詐聴による不正受給を防ぐことが目的です。
過去にこちらでサポートした際に、両耳とも全く聞こえておらず、オージオメータでは100デシベル以上であるにも関わらず、ABR検査では脳波に反応があると発覚して、不支給通知が届いた事例がありました。
医師に相談したところ、おそらくは中枢性の障害で、音をキャッチしていてもそれが脳に届いていない可能性が高いとのことでした。
そのご意見を基にして審査請求・再審査請求を行い、2年くらいかけてようやく1級に認められたこともありました。
受任してから申請までに行ったこと
まず、受診状況等証明書(初診証明)の取得を行いました。
原則として、初診日はカルテに基づいて証明することとされています。
ところがカルテは5年以上経過すると破棄してもよいとされているため、長い年月が経過してしまうと初診日を証明できなくなり、重い障害状態であっても障害年金が受給できなくなることがあります。
初診は20年も前でしたし、その時は数回で受診を中断されていましたので、クリニックや小さな病院であればすでにカルテを破棄されていてもおかしくない時期でした。
しかしこの方は、お母様の遺伝を意識していきなり大学病院を受診されており、その大学病院なら古くてもカルテは保管されていることを知っていましたので、問題なく取得できました。
診断書を依頼していただく際は、障害認定基準や正しい書き方などを理解していただくための参考資料を作成し、受診時に医師へお渡しいただいたところ、他覚的聴力検査結果も含めて正しい内容でお書きいただけました。
結果
無事、障害厚生年金1級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)

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