マルファン症候群からの慢性心不全で障害厚生年金3級に認められ5年遡及も出来たケース(事例№6560)
相談時の状況
生まれながらにマルファン症候群を患っておられる、50代の女性からご相談いただきました。
年金事務所へ何度も相談に行かれたそうですが、毎回異なる担当者に対応されたそうです。
その都度担当者から前回と異なる内容の話を聞かされたそうですが、最後には「障害年金は貰えない」と言われてしまい、困り果てておられました。
社労士による見解
この方は、子供の頃にマルファン症候群と診断されました。
特に治療が必要だったわけではなく、たまに気胸を起こして呼吸器内科を受診する以外は病院に いませんでした。
40代半ばで突然心不全を起こし、緊急搬送されたそうです。
大動脈弁輪拡張症、僧帽弁閉鎖不全症、心房細動、胸腹部大動脈瘤などの診断を受け、その約半年後に胸部大動脈を人工血管に置換する手術を受けました。
現在も慢性心不全のため動悸や息切れがあり、就労にも影響がでていました。
心臓疾患で、ペースメーカーやICDの植え込みをしていたり、人工弁に置換している場合は、それだけで障害等級3級に該当します。
大動脈を人工血管に置換している場合は、それだけでは3級に認められるわけではなく、症状により日常生活にも支障がでていると認められたら3級に該当します。
この方は大動脈を人工血管に置換しており、尚且つ就労にも影響がでていましたので、3級に該当する可能性はあると判断しました。
心臓疾患の原因はマルファン症候群であり、子供の頃に診断されていましたので、原則通りだと20歳前障害となる可能性も考えられました。
ご自身で年金事務所の窓口へ相談された際に「障害年金は貰えない」と言われたのは、20歳前障害だと、2級以上でなければ受給できない「障害基礎年金」の対象になると判断されたためだと思われます。
しかし、この方はマルファン症候群と診断された以降も特に問題はなく、治療も必要ない状態で長年過ごしてこられましたので、明らかに「社会的治癒」が認められる状況と判断しました。
受任してから申請までに行ったこと
突然心不全を起こして救急搬送された約10年前の時点を、初診日として進めることにしました。
この方は、心不全でA病院へ救急搬送され、手術を受けるためにB病院へ転院となり、退院後もしばらくB病院に通院していました。
一旦は状態が安定していたのですが、数年前に心不全が悪化し、A病院へ通院するようになっておられました。
通常は、初診の医療機関で「受診状況等証明書(初診証明)」を、初診日から1年6か月経過した時点の医療機関で「障害認定日時点の診断書」を、現在通院中の医療機関で「現時点の診断書」を作成してもらう必要があります。
しかしこの方が最初に救急搬送されたA病院は現在の通院中で、「現時点の診断書」を書いてもらう予定でした。
「現在の診断書」に記載される情報のみで初診日を証明できるため、「受診状況等証明書」は不要と判断しました。
「障害認定日時点の診断書」は、通常は初診から1年6か月経過した時点のことを書いてもらうのですが、人工血管に置換している場合は手術を受けた時点障害認定日となります。
そのため、B病院で手術を受けた直後の状態について「障害認定日時点の診断書」を作成してもらいました。
診断書には当然マルファン症候群のことも既存障害として記載されていましたので、病歴就労状況等申立書を作成する際は、長年治療の必要が無く、社会生活を普通に過ごせていたことを説明し、社会的治癒を主張する旨を記載しておきました。
結果
主張通り社会的治癒が認められ、障害認定日まで遡って障害厚生年金3級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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