未熟児網膜症で障害基礎年金1級に認められたケース(事例№6451)
相談時の状況
生まれながらに両未熟児網膜症を患っておられる、50代の女性からご相談いただきました。
約1年前から急激に視力が低下し、生活に支障を来すほどであったため区役所の福祉課へ相談し、視力障害で障害者手帳3級を取得されました。
さらに区役所の国民年金課で障害年金の申請もしたいと相談されたのですが、窓口の職員から、「あなたは障害年金を受給できない」と門前払いされてしまい、どうすればよいかわからなくなっているとのことでした。
社労士による見解
この方は生まれながらに目が悪く、小学校に入学してからは1年に1回程度、大学病院の眼科を受診していたそうです。
10歳の時に片目の網膜剥離が始まり、その大学病院で手術を受けました。
その時は非常に珍しい手術だったため、大勢の学生が見学していたそうです。
その後は主治医が独立開業したため、そのクリニックに転医しました。
年1回程度の受診を継続していましたが、視力は両目とも0.3くらいを維持できていたそうです。
約5年前に主治医が引退することとなったため、近くの総合病院へ転医しました。
転医後も年1回程度の経過観察を続けていましたが、なぜか昨年から急激に視力が低下し始め、両目とも0.03になっていました。
この方の視力だと、以前は2級相当の障害状態でしたが、令和4年1月に変更された障害認定基準だと、1級相当でした。
障害者手帳が3級だったので、役所の窓口担当者が障害年金はもらえないと勘違いされたのかもしれません。
受任してから申請までに行ったこと
障害年金は初診日を証明できなければ受給できませんので、まずは初診日を証明する必要があります。
原則は当時のカルテに基づいて受診状況等証明書(初診日証明)を作成してもらわなければならないのですが、5年以上経過したカルテは破棄してもよいとされているため、初診日が過去になればなるほど証明しづらくなります。
しかしこの方が子供の頃に通っておられた大学病院は、紙カルテも昭和59年以降分をすべて保管されていることを経験から知っていましたので、問題ないと考えていました。
ところが、眼科の外来受付へ連絡し事情を説明すると、「古い紙カルテは倉庫へ保管されているため確認できません」「書けるかどうかは医師が判断しますので、まずは本人が診察を受けてください」とおっしゃいます。
まずはカルテが残っているかを確認してほしいとお願いしても、「カルテは医師でなければ探せません」「まずは受診してもらい、医師が書けると言えばカルテを探します」などとおっしゃいます。
障害状態を証明する診断書を書いてもらうなら当然受診が必要ですが、初診証明は当時のカルテ内容に基づいて記載してもらうものですので、受診をする必要はありません。
そもそもカルテが残っているかを確認する前に、受診によって医師が書けるかどうかを判断するというのもおかしな話です。
現在通院しておられる病院へ確認したところ、大学病院の頃から診てもらっていた医師が書かれた紹介状が残っていました。
ご本人にお願いしてコピーを取得してもらったところ、幼少期から大学病院へ通院しており、その病院で手術を受けたことなども詳細に記載されていましたので、その紹介状を初診日を証明する証拠として進めることにしました。
結果
無事に紹介状の内容で20歳前の初診日を認めてもらえ、障害基礎年金1級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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