緑内障で障害年金請求をしたが障害者手帳の診断書から初診日を疑われ不支給とされていたケース
相談時の状況
緑内障を患っておられる50代女性からご相談いただきました。
ご自身で苦労しながら障害年金の申請をされたのですが、年金機構から資料の追加提出指示などが何度も何度もあり、審査に8か月もかかった挙句に、「初診日が認められない」という理由で不支給となったそうです。
遠方にお住まい方でしたので、まずは前回の申請で年金機構へ提出された書類一式のコピーをご郵送いただき、それを拝見しながら電話で詳しくご状況を伺いました。
社労士による見解
まず受診状況等証明書(初診証明)と診断書の記載内容を確認したところ、『45歳』だった10数年前が初診日として、認められるはずの内容がしっかりと書かれていました。
しかし申請後に年金機構から、障害者手帳取得時の診断書コピーを追加提出するよう指示があったそうです。
実は、提出書類の一つに病歴就労状況等申立書という、発症から現在までの状況などについてこと細かく記載しなければならない書類があり、その中には障害者手帳取得の有無について記載する項目があります。
ここに障害者手帳を取得していると書かれている場合は、その時の診断書も提出するよう後で指示されることがあるのです。
そのコピーを見ると、「『40歳』の時、近医にて緑内障と診断された」と書かれていました。
それを見た審査機関は、初診日は『45歳』のときではなく、『40歳』のときであると判断し、『40歳』のときの初診証明の提出を求めてきました。
この方が当時のことを思い返してみられたところ、確かに40歳の時に眼科クリニックを、コンタクト作成のために受診したことがあったそうです。
その時に医師から、「緑内障の疑いがある」と言われたらしいのですが、本人は全く自覚症状がなかったため、そのままほったらかしにしていておられました。
その後45歳のときに左眼の見えにくさを感じ、大きな病院の眼科を受診したところ、緑内障の確定診断が出ました。
慌てて当時の眼科へ問い合わせされたのですが、既にカルテは廃棄されており、パソコン上に最後の受診日が残されているだけであることがわかりました。
そのことを年金事務所の窓口担当者へ伝えると、「受診状況等証明書が添付できない申立書」という書類を自分で書くよう指示され、その場で書いて提出されました。
(ちなみのこの申立書だけを提出しても、単なる自己申告でしかないため証拠と見なされず、初診日が認められる可能性はゼロです)
また自宅から、当時の眼科の診察券(初診日の記載有)が見つかったため、それも資料として添付されました。
さらに審査機関から、『45歳』時を初診として初診証明を作製した医療機関へ、その根拠となるカルテのコピーを提出するよう指示がありました。
そのカルテを細かく見てみると、数年前に40歳当時の眼科で視野が狭いと指摘されたことがある、との記載が見つかりました。
これだけ当時の状況がわかる証拠が揃いながら、初診日不明との審査結果は不当だと判断したのですが、既に審査請求(不服申立)を行える期限は過ぎていましたので、もう一度申請しなおすこととしました。
受任してから申請までに行ったこと
まず、40歳の時に受診した眼科へ依頼し、受診状況等証明書(初診証明)の用紙に、最終受診日だけをパソコン記録に基づいて書いてもらえるよう依頼しました。
出来上がってきたものを見ると、本当に最終受診日が書いてあるだけで、それ以外の状況は何もわからない内容でした。
しかし、その眼科の診察券には初めて受診した日が書かれていましたので、少なくとも通院期間はこれで証明できると判断しました。
実は、初診日が厚生年金である場合は、年金額が厚生年金の加入期間に基づいて計算されるため、少なくとも「〇年〇月」というところまで証明できなければ認められません。
しかし初診日が国民年金である場合は、年金額が定額であるため、国民年金加入期間に初診日が存在することさえ証明できれば、審査機関としては認めざるを得ないのです。
この方が最初の眼科へ通っていた期間は、全て国民年金でした。
さらに、前回の申請で機構にも提出しておられた45歳当時のカルテには、数年前に受診した眼科として、その眼科クリニックの名称まで書かれていましたので、国民年金加入期間であったその眼科の通院期間に初診日が存在することの有力な証拠であると判断しました。
病歴就労状況等申立書を作成する際に、上記のような内容を整理し、状況をわかりやすく記載しました。
結果
無事、障害基礎年金2級に決まりました。
この方は以前にご家族の障害年金請求を行ったご経験があり、年金事務所の窓口担当からも親切に教えてもらうことができるため、自分で問題なくできると判断されたそうです。
しかし結果的にこのようなこととなり、初めから専門家へ相談しなかったことを強く後悔したと仰っておられました。
障害年金制度は、非常に複雑です。
制度のことを良く理解しないまま進めてしまうと、本ケースのような状況に追い込まれてしまうことは珍しくありません。
まず初めに、専門家へご相談いただくことをお勧めします。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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