脳出血による片麻痺と失語症で障害厚生年金1級に認められたケース
相談時の状況
脳出血を患われた40代女性のご主人からご相談いただきました。
ご主人が年金事務所へ相談しながら、既に受診状況等証明書(初診証明)や診断書も取得しておられたのですが、正しい内容になっているかどうか不安に感じられてご相談いただいたようです。
社労士による見解
奥様は、ちょうど1年6か月前に脳出血で倒れて緊急搬送されました。
その後、懸命にリハビリをされましたがあまり効果は無く、右腕と右足は殆ど動かせない状態となりました。
また高次脳機能障害も残ってしまい、会話や文章を理解することはできるものの、自分で言葉を構築することができなくなってしまい、喋ることや文章を書くことが一切できなくなりました。
この障害状態は、右上下肢の麻痺だけを見ても1級相当でした。
また、高次脳機能障害による失語症は2級相当でした。
受任してから申請までに行ったこと
ご主人は年金事務所の窓口の指示に従い、脳出血で緊急搬送された1年6か月前を初診日として進めておられました。
ところが診断書を見てみると、「傷病の原因又は誘因」の項目に、『もやもや病』と記載されていました。
障害年金制度における初診日とは、「障害の原因となった傷病について初めて医師の診療を受けた日」と定義されています。
もやもや病は脳の血管に生じる病気で、血管が細くなるため脳梗塞や脳出血を起こしやすくなります。
そのため、初診日証明はもやもや病でとらなければなりません。
詳しくお話を聞くと、当時は看護師として病院に勤務しておられました。
勤務中に倒れ、勤務先の病院ですぐに診てもらったところ、もやもや病と診断されました。
その病院へ連絡したところ、カルテは既に破棄されていましたが、当時医師が書かれた診断書のコピーをご本人が保管しておられましたので、それを初診証明として使用することにしました。
また診断書の障害程度に関する項目を見ると、明らかに実態よりも軽い書き方をされており、記載漏れもありました。
肢体障害だけで1級相当の状態なのですが、診断書は2級とされてしまう内容でしたので、書かれた医師に実態をご理解いただき、修正していただく必要がありました。
直ぐにその病院の相談員に連絡し、事情を説明して間に入ってもらうことができましたが、残念ながら先生にはご理解いただけず、記載漏れに追記していただけただけでした。
しかし、失語症も2級相当でしたので、肢体障害の2級と合わせれば1級に認めてもらうことができます。
そのため、肢体障害だけで1級を主張することは諦め、言語障害と合わせ手続きすることにしました。
更新のたびに肢体障害用と言語障害用の診断書を年金機構へ提出しなければならくなりますが、致し方ないと判断しました。
結果
無事、障害厚生年金1級に決まりました。
一度書いた診断書について修正を求められることは、どこの医師にとってもうれしいことではありません。
記載漏れに追記をして貰うくらいなら当然対応してもらえますが、それ以上のことは難しい場合が大半です。
診断書は書いてもらう前に、正しい書き方や日常生活の状況などについて医師にご理解いただいておくことが重要です。
初めから正い内容の診断書を書いてもらいやすくするためにも、早い段階で専門家へご相談いただくことをお勧めします。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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