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交通事故による高次脳機能障害で障害基礎年金2級に認められたケース

相談時の状況

お父様からお電話でご相談いただき、後日面談にお越しいただきました。

初めはお父様が年金事務所へ通って手続きを進めようとされたのですが、医師に書いてもらった診断書の内容が適切かどうか判断できず、病歴就労状況等申立書の書き方もわからなかったため、不安になって近くの社労士に相談されました。

 ところが、その社労士は障害年金の経験がないためか診断書を見せても反応がなく、病歴就労状況等申立書も自分で書くよう言われてしまったため、改めて当センターへご相談いただいたそうです。

 

社労士による見解

詳しくお話を伺うと、息子さんは18歳の時に突然後方から走ってきた車に撥ねられ、救急搬送されました。頭部外傷によるびまん性軸索脳損傷と両側骨盤骨折で瀕死の状態でしたが、何とか一命をとりとめたそうです。

 ところが脳のダメージが大きく、しばらくすると体は動かせるようになりましたが、事故前1年間くらいの記憶が全て無くなっていたそうです。友人が見舞いに来ても誰だかわからず、話しかけても一切興味が無い様子でした。新しいことを覚える記憶力も極端に低下し、いつも顔を合わせている医師や看護師に対しても、「誰?」と毎日尋ねていました。

 事故前は明るく活発で友達も多かったのですが、事故後は人格も大きく変わってしまい、怒りっぽくなって家族に暴力を振るうようになりました。入院中は他の患者や職員の言動で気に入らないことがあるとすぐに暴れ出し、病室の壁を破壊したこともありました。場の空気も読めなくなり、自分勝手な行動ばかりするようになったため友人も全て離れていったそうです。

また食欲を押さえられない様子で、入院中は他の入院患者の食事を横取りしたり、お金を盗んで食べ物を購入したりするようになったそうです。

退院後は試験的にB型の支援センターへ通わせてもらうこととなったが、切符の買い方も理解できなくなり、センターでの単純作業も覚えられませんでした。センターの利用者や職員ともうまくいかず、毎日のように暴れ出したため、利用を断られてしまったそうです。

お父様のお話を伺っただけでも、障害等級に該当するほどの状態であることは明らかでした。

 

受任してから申請までに行ったこと

既に完成していた診断書を拝見したところ、実態とはかけ離れた内容になっていました。脳神経外科の医師が作成されていたのですが、前述したようなことには一切触れられておらず、障害状態に関しては、「指示されたことは実行できるが長続きせず、自発性に乏しいと」簡単に記載してあるだけでした。

 高次脳機能障害の影響により社会生活が困難な状況にあることはあまり意識されておらず、単に食欲旺盛で機能的な障害が無いということから、ほぼ健康体のようにとらえておられるようでした。このような診断書を提出しても障害状態を理解してもらえず、不支給とされてしまうことは明らかでした。

 この方は感情の起伏を押さえるために、他院の神経内科で投薬治療も受けておられましたので、直ちにその先生に診断書作成を依頼していただいたところ、問題ない内容でお書きいただけましたので、そちらを提出することにしました。

 病歴就労状況等申立書を作成する際は、前述したような日常生活上の様々な問題をこと細かく記載しました。

 

結果

無事、障害基礎年金2級に認められました。

診断書は医師が医師の判断に基づいて作成するものであり、我々社労士が内容について口出しをすることはできません。しかし全ての医師が、診断書の書き方を正しく理解されているわけではありません。特に精神疾患や高次脳機能障害のような目に見えない障害は、医師の主観だけで判断されてしまう部分が多くあり、同じ傷病で同じ症状が出ていても、各医師によって内容は大きく異なってしまうのが実情です。

 間違った認識で作成された診断書でも、その内容が正しいという前提で審査を進められてしまいますのでご注意ください。

社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)

舩田 光朗
舩田 光朗社会保険労務士
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