指が全く動かせないのに不支給とされたが審査請求で障害基礎年金2級に認められたケース(事例№6628)
相談時の状況
子供の頃に発症した脳出血により右片麻痺がある30代の女性について、お父様からご相談いただきました。
社労士による見解
この方は小学生の時に脳出血が起こり、右片麻痺が残りました。
リハビリによって右脚は歩けるほどに回復しましたが、右腕は肘から先が全く動かせない状態でした。
障害年金は初診日の時点に加入していた年金制度によって、対象が障害基礎年金か障害厚生年金のどちらかに決まります。
初診時点でまだ子供で年金に加入する前だった場合は、20歳前障害として障害基礎年金の対象となります。
障害厚生年金は等級が1級から3級までありますが、障害基礎年金は1級と2級しかなく、2級以上に認められなければ受給できません。
上肢の障害についての障害認定基準のなかには、「一上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するもの」とう記述があります。
この方は肘から先が全く動かせない状態でしたので、当然指も全く動かせませんでした。
そのため、間違いなく障害等級2級に該当すると判断しました。
受任してから申請までに行ったこと
この方は子供の頃に障害状態は固定しており、治療の必要もありませんでしたので、小学校を卒業してからはどこにも通院していませんでした。
障害年金申請には医師の診断書が必要であり、新たに受診が必要でしたので、いつもお世話になっている総合病院の相談員さんに事情を説明したところ、整形外科の医師に診てもらえることになりました。
診断書をお書きいただく際は、審査のポイとになる右上肢の指の状態について詳しくお書きいただきたい旨を資料にまとめて相談員さんからお渡しいただいたところ、右手の握力がゼロであることや、「右上肢の指は全く機能していない」という文章もお書きいただけました。
間違いなく2級に認められる内容で申請したのですが、数か月後になんと不支給の通知が届きました。
最終的に不支給の判断をした認定医(審査本部にいる審査をするための医師)の考えを調べるために、厚労省へ開示請求を行って認定調書を公開してもらったところ、とんでもない理由で落とされていたことがわかりました。
認定医は診断書の内容から、右手の握力がないことや全く使用できないことを把握していながらも、着替えをある程度一人でできるとされている部分に注目し、「それならば右手の指も少しは使えているはず」と解釈して、2級にするほどではないと判断していたのです。
着替えがある程度可能だったのは、左手のみを使ってのことで、右手は関係ありません。
にもかかわらず、「両手で着替えを行えた」という間違った解釈をしていましたので、その点を指摘する文書を作成してすぐに審査請求(不服申立)を行いました。
結果
数か月後に近畿厚生局から間違いを認める文書が届き、障害基礎年金2級に認められました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)
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