アルコール依存からのコルサコフ症候群で障害厚生年金1級に永久固定で認められたケース(事例№7175)
相談時の状況
アルコール依存症で精神病院へ入院されている60代の男性について、奥様からご相談いただきました。
64歳の誕生日に年金機構から特別支給の老齢厚生年金の案内が届き、年金事務所の窓口へ相談に行かれたところ、障害者特例の申請を勧められたそうです。
————————————————————-
※特別支給の老齢厚生年金とは、以前は60歳から満額支給されていた老齢年金の支給開始年齢が65歳に変更された際、スムーズに移行させるため、支給開始年齢を段階的に引き上げたもの。
※障害者特例による老齢厚生年金とは、特別支給の老齢厚生年金を受給している人が、障害等級3級以上の障害状態と認められた場合に、プラスアルファが支給される制度。
————————————————————-
説明を聞いてもよくわからなかったため、病院のソーシャルワーカーさんに相談したところ、当センターへ連絡してみるよう言われたとのことでした。
社労士による見解
奥様に詳しくお話を伺ったところ、ご主人は飲食店を経営されていた40代の頃から飲酒量が増えていったそうです。
50歳頃からは会社勤めをされていましたが、飲酒量は相変わらずでした。
酒に酔って度々トラブルを起こしていましたが、50代半ばごろに、車の操作方法が急にわからなくなったと妻に電話してきたそうです。
異常を感じて精神科を受診させたところ、やはりアルコール依存症と診断され、軽度の脳萎縮も認められました。
その後はクリニックへ転医しましたが、認知機能も低下しているためかお酒を止められず、会話もまともに行えなくなってしまい、精神病院へ入院となりました。
障害認定基準上アルコール依存症は、「精神病性障害を示さない急性中毒及び明らかな身体依存の見られないもの」は認定の対象にならないと定められています。
当センターをご紹介いただいたソーシャルワーカーさんに連絡を取って確認したところ、カルテ上はアルコール依存症の記載のみでしたが、医師にご確認いただいたところ、コルサコフ症候群に該当すると考えておられることがわかりました。
また障害状態についても、まともに会話ができないことに加え、目を離すと何をするかわからないため常に誰かが付いていなければならない状態でしたので、1級に該当する可能性があると判断しました。
受任してから申請までに行ったこと
年金事務所へ行き、障害者特例による老齢厚生年金の金額を確認したところ、自営業をされていた期間が長くあったため、支給される年金額は、障害厚生年金3級にも満たない金額だとわかりました。
この方は初診日の時点で厚生年金に加入されていたため障害厚生年金の対象で、間違いなく2級以上に該当する障害状態でしたので、障害者特例による老齢厚生年金ではなく、障害年金の手続きを行うべきだと判断しました。
診断書をお書きいただく際は、発症から現在までの経緯などを奥様からヒアリングし、参考資料として文章にまとめたものを作成し、ソーシャルワーカーさんから医師にお渡しいただいたところ、実態に即した正しい内容でお書きいただけました。
病歴就労状況等申立書を作成する際も、ヒアリングに基づいて詳細に記載しました。
結果
無事、障害厚生年金1級に決まりました。
社会保険労務士 舩田 光朗(ふなた てるあき)

「その他精神障害」の記事一覧
- 最初の受診から2年後が初診日と認められ若年性認知症で障害厚生年金2級に認められたケース(事例№6890)
- アルツハイマー型の若年性認知症で障害厚生年金2級に認められたケース(事例№6587)
- 強迫性障害で長年治療を受けていたが障害基礎年金2級に認められたケース(事例№6315)
- 若年性アルツハイマー病で不支給になっていたが再チャレンジで障害基礎年金1級に永久固定で認められたケース(事例№6250)
- コルサコフ症候群で障害基礎年金2級に永久固定で認められたケース(事例№5928)
- 障害年金対象外の不安障害で申請したが障害基礎年金2級に認められたケース
- 鉗子出産が原因の器質性気分障害で障害共済年金1級に認められたケース(事例№5311)
- 混合性認知症で障害基礎年金1級に認められたケース(事例№5234)
- レビー小体型認知症のパーキンソン症状を審査対象外とされたケース(事例№5088)
- うつ病ではなくびまん性白質脳症とわかり障害厚生年金2級に等級変更できたケース(事例№5052)
- アルコール依存症からのウェルニッケ脳症で障害厚生年金2級に認められたケース(事例№506)
- 外出できただけで受給できないと言われていたが認知症で障害厚生年金2級になったケース(事例№569)
- 就労していた時点でも若年性認知症で2級に認められたケース