てんかんで障害状態に変化はなかったが障害基礎年金2級から1級へ等級変更できたケース
相談時の状況
てんかんで約10年前から障害基礎年金2級を受給されている、30代後半の息子さんについて、お母様からご相談いただきました。
障害状態は非常に重いはずなのに、なぜ1級にならないのかと障害者支援センターへ相談されたところ、対応された職員さんから、以前からよくやり取りをしていた当センターをご紹介いただきました。
社労士による見解
お母様から詳しくお話すを伺うと、この方は投薬を受けていても、意識を消失して卒倒するほどの発作が週に10回以上出現しているとのことでした。
そのため一般就労は不可能で、障害者雇用の仕事であっても、発作が頻発するため職場で嫌がられてしまい、退職させられることが度々あったそうです。
実はてんかんの障害等級は、発作の程度や頻度だけで判断されるわけではありません。
1級の障害認定基準には、発作のタイプや頻度に加えて、「常時の援助が必要なもの」という文言が明記されています。
つまり、発作は1級相当でも、日常生活に大きな支障がでていると見なされなければ、低い等級で判断されてしまうのです。
「常時の援助が必要」かどうかは、主に医師の診断書の書き方から判断されます。
特に日常生活能力に関するチェック項目を、発作発生時ではなく、発作間欠時で書かれてしまうと、障害状態を軽く見られてしまうのです。
この方の過去に年金機構へ提出された診断書のコピーを拝見したところ、日常生活能力の項目が、やはり発作間欠時で判断した非常に軽いところにばかりチェックされていました。
受任してから申請までに行ったこと
まず、てんかんの障害認定基準や、正しい診断書の書き方について医師にご理解いただくための参考資料を作成しました。
さらに、この病院には以前から知っているソーシャルワーカーさんがいらっしゃいましたので、事情や資料の内容についてその方に説明し、ソーシャルワーカーさんから医師へご説明いただきました。
すると、問題の無い内容の診断書をお書きいただくことができました。
結果
無事、障害基礎年金1級に等級変更されました。
障害等級は、障害認定基準に基づいて、主に診断書の記載内容から判断されます。
障害認定基準は病気や障害の箇所などによって細かく定められているのですが、基準が曖昧なものも数多く存在します。
例えば手足を切断するような障害は、手や足がどこから切断されているかで明確に等級判断ができるため、診断書の書き方はあまり等級判断に影響しません。
また視力・視野障害や聴力障害なども、数値による明確な基準が存在するため、比較的正しい等級判断が行われます。
ところが大半の基準は曖昧な部分が存在するため、診断書の書き方によって等級判断に大きな差が生じてしまうのです。
診断書は、もちろん医師の判断によって書かれなければなりませんので、患者や私のような社労士が内容について口出しすることはできません。
しかし、正しい診断書の書き方を医師にご理解いただく必要はありますので、障害状態を正しく審査してもらうために、まずは専門家へご相談いただくことをお勧めします。
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